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プラットフォーム経済分野における独占禁止ガイドラインについて

2020年12月に中国の最大手ネット通販プラットフォーム企業であるアリババに対し、中国独占禁止法違反を理由とした過料が課され、また調査が開始されたことは日本でも大きく報道されました。

www.nikkei.com

上記の処罰は、アリババが銀泰商業(集団)有限公司の持分を取得したことが独占禁止法で定める経営者集中(日本でいう企業結合)に関する規定に違反したことを理由としてなされました。また、その後に開始された調査は、アリババによる事業者に対する「二者択一」(中国語は「二选一」)という行為が独禁法違反に該当するということが理由とされています。

アリババについては、傘下のアントグループの上海、香港両市場における上場が延期され、その背景としてアリババ創始者であるジャック・マー(馬雲)の金融当局に対する発言が問題視されたのではないかと推察されているなど、中国共産党や政府との関係性が注目されていますが、今回の調査や処罰もそのような関係性が一つの理由になっているのではないかと見られています。

その辺りの真偽は不明ですが、他方でアリババが中国国内の一強プラットフォーマーとなっていることによる不当な取引制限や優越的地位の濫用等といった独禁法上の問題とはなっていました。もっとも、ECプラットフォーム業界は、業界としても比較的新しく、特殊であるため、積極的な独禁法の適用による摘発等は行われてきませんでした。

しかし、アリババのような大型プラットフォーム企業による市場における役割や経済に与える影響が日々大きくなっていることに伴い、これらにも適正に独禁法を適用することが課題となっていたところ、2020年11月に「プラットフォーム経済分野における独占禁止ガイドライン」(关于平台经济领域的反垄断指南、以下「本ガイドライン」といいます。)のパブリックコメント募集稿が公布され、意見募集期間を経て、2021年2月に正式に制定、施行されました。今回は、本ガイドラインについて、その概要を見てみたいと思います。

1 独占合意の禁止

独占合意とは、競争を排除もしくは制限する合意、決定又はその他の協調行為をいいます(独禁法第13条第2項、本ガイドライン第5条)。

プラットフォーム経済分野における独占合意について、合意や決定は書面や口頭等の形を含み、明確な合意や決定がない場合でも、データ、アルゴリズム、プラットフォーム規則等を利用することにより事実上の一致する行為がある場合には「その他の協調行為」と見なされます。但し、独立意思による価格フォロー等の平行行為はこの限りではないとされており、データ、アルゴリズム等による独占合意を形成するには、意思連絡、情報交換が必要とされています(本ガイドライン第5条)。

独占合意を構成するか否かを認定するにあたっては、プラットフォームの関連市場の競争状況、プラットフォーム経営者、プラットフォーム内の経営者の市場における力量、その他経営者が関連市場に参入するにあたっての障害の程度、イノベーションに対する影響等の要素を考慮することが列記されました(本ガイドライン第二章頭書)。

独占合意として、典型的には水平型独占合意(横向垄断协议)、垂直型独占合意(纵向垄断协议)がありますが、本ガイドラインでは、プラットフォーム経済分野における特殊な類型、ハブ・アンド・スポーク型独占合意(轴辐协议)という3つの類型が定められています。

1‐1 水平型独占合意

水平型独占合意とは、競争関係のあるプラットフォーム経済分野における事業者が、以下の方法によって価格(商品価格だけでなく、事業者のうけとるリベート、手数料、会員費、販促費等のサービス費用も含みます。)の固定、市場の分割、生産販売量の制限、新技術の制限、共同での取引ボイコット(联合抵制交易)等の独占合意をすることをいいます(本ガイドライン第6条第1項)。

  • プラットフォームを利用した価格、販売量、コストやユーザ等情報の収集・交換

  • 技術手段による意思連絡

  •  

    データ、アルゴリズム、プラットフォーム規則等を利用することによる協調行為の実現

1‐2 垂直型独占合意

垂直型独占合意とは、プラットフォーム経済分野における事業者が取引相手と、以下の方法によって再販価格の固定、最低再販価格の制限等の独占合意をすることをいいます(本ガイドライン第7条第1項)。

  • 技術手段による価格の自動的設定

  •  

    プラットフォーム規則による価格の統一

  •  

    データやアルゴリズムによる価格への直接または間接的制限

  • 技術手段、プラットフォーム規則、データ・アルゴリズム等の方法によりその他取引条件を限定し、市場競争を排除、制限すること

なお、プラットフォーム事業者が、プラットフォーム内での事業者に対して、商品価格や数量等の取引条件について、他のプラットフォームとの取引条件と同等かそれより優れた取引条件を提供することを要求する場合、独占合意だけでなく、支配的地位の濫用にも該当しうることが明確にされています(本ガイドライン第7条第2項)。

1‐3 ハブ・アンド・スポーク型独占合意

競争関係のあるプラットフォーム内の事業者が、他のプラットフォーム事業者との垂直的関係(プラットフォーム事業者が価格メカニズム、取引の仕組み、競争の規則等を設定)を利用し、又はプラットフォーム事業者が競争関係者に取引制限を形成させることにより、水平型独占合意と同じ効果のある合意をすることをいいます(本ガイドライン第8条)。

プラットフォームを車輪のハブ、プラットフォーム内の事業者を車輪のスポークと見立てた独占合意であり、水平型独占合意の一種と整理されていると理解されます。プラットフォーム内の事業者同士が直接的に独占合意をする必要はなく、プラットフォームを通じて間接的に独占合意に至る場合も独占合意として認定される可能性があります。

2 市場における支配的地位濫用の禁止

2‐1 支配的地位濫用の認定

ガイドラインでは、プラットフォーム経済の特徴を踏まえ、支配的地位の濫用行為の認定、推定にあたっての審査ポイントを具体的に示しています(本ガイドライン第11条)。

具体的には、

  1. 事業者の市場シェアと関連市場における競争状況
  2. 事業者が市場をコントロールする能力
  3. 事業者の資金力と技術力
  4. 他の事業者の当該事業者に対する取引依存度
  5. 他の事業者が関連市場への進出の難易度

といった観点からの認定、推定を行うものとされています。そして、各要素を認定するにあたっての個別の事由は以下のとおり具体的に列挙されています。

2‐1‐1 事業者の市場シェアと関連市場における競争状況

事業者の市場シェアを確定するために、取引金額、取引量、売上高、アクティブユーザー人数、クリックレート、サイトの利用時間その他の指標、及び当該市場シェアを維持する時間を勘案することが可能と明記されました。

また、関連市場における競争状況を分析するにあたっては、プラットフォーム市場の発展状況、既存競争者数とその市場シェア、プラットフォーム競争の特徴、プラットフォームの差異程度、規模の経済、潜在的競争者の状況及びイノベーションと技術変化等を勘案することが可能と明記されました。

2‐1‐2 事業者が市場をコントロールする能力
  • 川上市場・川下市場又はその他関連市場をコントロールする能力や、他の事業者の関連市場への進出を阻害し、又は影響を及ぼす能力

  •  

    関連プラットフォームのビジネスモデル、ネットワーク効果

  •  

    価格、クリックレート又はその他の取引条件を決定し、又は影響を及ぼす能力

2‐1‐3 事業者の資金力と技術力
  • 当該事業者の出資者状況、資産規模、資本金の出所、収益性、融資能力、技術のイノベーションと活用能力、知財保有状況、データ情報の活用能力

  •  

    事業者の資金力と技術力がいかに業務拡張もしくは市場地位の維持を促すか

2‐1‐4 他の事業者の当該事業者に対する取引依存度
  • 他の事業者が当該事業者との取引関係、取引量、取引の継続時間、ロックイン効果、ユーザ依存度
  • 他の事業者が他のプラットフォームへの切り替え可能性及び切り替えコスト
2‐1‐5 他の事業者による関連市場への参入の難易度
  • 市場アクセス、プラットフォームのスケール効果、資金の投入規模、技術の壁及びデータ取得の難易度

  •  

    ユーザが複数のプラットフォームの利用傾向、ユーザのプラットフォーム切り替えコスト、ユーザの習慣

2‐2 支配的地位の濫用の行為類型

ガイドラインでは、プラットフォーム経済における支配的地位の濫用行為について個別の行為類型を定め、各行為類型についてその認定、推定をするにあたっての考慮要素を個別に列挙しています。

2‐2‐1 不公平な価格行為

不公平な価格行為とは、プラットフォーム経済分野における事業者がその支配的地位を濫用し、不公平な高価格で商品販売し、又は不公平な低価格で商品を購入する行為をいいます(本ガイドライン第12条)。

同一又は類似する市場条件のもとで不公平な高価格で販売、又は不公平な低価格で購入するのは、不公正な価格行為の一つとして挙げられており、同一又は類似する市場条件であるか否かは、プラットフォームの類型、取引プロセス、原価構成、取引に関する具体的な状況等を勘案して判断されます。

2‐2‐2 廉価販売

廉価販売とは、プラットフォーム経済分野における事業者がその支配的地位を濫用し、正当な理由なく原価よりも低い価格で商品を販売し、市場競争を排除、制限する行為をいいます(本ガイドライン第13条)。

2‐2‐3 取引の拒絶

取引の拒絶とは、プラットフォーム経済分野における事業者がその支配的地位を濫用し、正当な理由なく相手方との取引を拒絶し、市場競争を排除、制限する行為をいいます(本ガイドライン第14条)。

プラットフォーム経済分野における必須施設をコントロールする事業者が、取引先に対し合理的な条件での取引を拒絶するのは、取引拒絶の一つとして挙げられており、プラットフォームが必須施設であるか否かは、当該プラットフォームがデータを保有する状況、他のプラットフォームの代替可能性、取引先が当該プラットフォームへの依存度、潜在的利用可能なプラットフォームがあるか否か等を総合的に勘案して判断されるとされました。

2‐2‐4 取引の制限

取引の拒絶とは、プラットフォーム経済分野における事業者がその支配的地位を濫用し、正当な理由なく相手方との取引を制限し、市場競争を排除、制限する行為をいいます(本ガイドライン第15条)。これは、プラットフォーム事業者が取引先に対し他のプラットフォームでの販売を制限する「二者択一」という冒頭でも説明した行為が該当します。

取引を制限する行為としては、主として以下の二つの類型が想定されています。

  1. 店舗の遮蔽、検索の順位下げ、アクセス数の制限、技術による阻害、保証金の控除等の懲罰的な方法による取引制限。
  2. 割引、補助金、アクセスへの便宜を提供する等、取引先、消費者又は社会に一定のメリットを与えるものの、市場競争を排除、制限することが証明された場合には、取引制限となる。
2‐2‐5 商品の抱き合わせ販売、又は不合理な取引条件の付加

プラットフォーム経済分野における事業者がその支配的地位を濫用し、正当な理由なく商品の抱き合わせ販売を実施し、又は不合理な取引条件を不可する行為をいいます(本ガイドライン第16条)。

ポップアップ表示等取引相手が選択、変更又は拒絶することのできない方法による商品の抱き合わせ販売、又は必須ではないユーザ情報の強制的な収集等は禁止行為として挙げられています。

2‐2‐6 差別的待遇

プラットフォーム経済分野における事業者がその支配的地位を濫用し、正当な理由なく、取引条件が同等の相手方に対して差別的な待遇をする行為をいいます(本ガイドライン第17条)。これは、事業者が自ら保有するビッグデータ等に基づいて取引相手ごとに異なる取引条件を設定するような行為(例えば、とあるプラットフォームでの取引実績がある者と取引実績がない者との間で、同一の商品について異なる価格を設定する行為)を想定したものです。これは中国語で「大数据杀熟」といい、近年問題視されていた行為です。

ビッグデータアルゴリズムに基づき、取引相手の支払能力、消費傾向又は利用習慣などにより差別的価格、差別的基準・規則、差別的支払条件と取引方式を行うことが、本ガイドライン上差別待遇の一つとして挙げられています。

3 企業結合

ガイドラインは、プラットフォーム経済分野における企業結合の届出基準、国務院独占禁止執行機関による主動的審査、勘案要素及び救済措置について、詳細な規定を定めました。

3‐1 企業結合の届出基準

プラットフォーム経済分野における売上高の計算方式は、業界の習慣、支払い条件、ビジネスモデル、プラットフォームの事業者の役割等により異なることが明記されています。

単なる情報マッチングによる手数料等で稼いでいるプラットフォームの事業者に対しては、プラットフォームが受け取った手数料やその他の収入額により売上高を計算することができ、他方、プラットフォーム事業者がプラットフォーム側の市場競争へ参入し、若しくは主導的役割を果たした場合、プラットフォームで発生した取引金額を計算することもできるとされています(本ガイドライン第18条第1項)。

また、いわゆるVIEスキームによる事業者集中についても、事業者集中の審査対象になることが明記されました(本ガイドライン第18条第2項)。アリババに対して処罰がなされたのは、まさにこれに違反したということになります。VIEスキームについてはまた別の機会にご説明したいと思います。

3‐2 届出基準を満たさない企業結合

届出基準を満たさない企業結合への審査について、企業結合の当事会社にベンチャー企業があり、又は無料か低価格による売上高が低いものの、関連市場の集中度が高く、かつ競争者が少ない場合、届出基準を満たさないにもかかわらず、市場競争を排除又は制限する恐れがある場合、国務院独占禁止執行機関はそれを審査することができるとされました(本ガイドライン第19条第3項)。

したがって、この業界における事業者集中に関しては届出の要否を判断するにあたっては慎重になる必要があるといえます。

3‐3 救済措置

救済措置について、市場競争を排除又は制限する恐れのある企業結合に対し、国務院独占禁止執行機関は、以下の制限を付加することにより禁止しないことができるとされています(本ガイドライン第21条)。

  • 有形資産、知的財産、技術、データ等の無形資産、又は関連収益等を分割すること。
  • ネットワーク、データ又はプラットフォーム等インフラ施設をオープンし、キー技術を利用許諾し、排他協議を終了し、プラットフォーム規則又はアルゴリズムを修正し、互換性を承諾し、若しくは相互運用性を維持すること。
  • 上述2点を組み合わせて運用すること。

日本から中国への渡航、そして隔離(上海編)

昨年12月末に日本に帰国し、2ヶ月弱日本での滞在をした後、2月14日に中国に再帰国を果たしました。今回は、前回の大連ではなく上海へ直接の帰国となりました。

前回中国へ帰国した2020年9月時点と、2021年2月時点では中国への渡航に関する条件も若干変わっていますし、大連と上海とでも異なる部分も少なからずありますので、今回は日本から上海への渡航、及びその後の隔離状況についてアップデートしたいと思います。

上海へ駐在、出張でいらっしゃる方は依然少なからずいらっしゃいますので、今後上海へ渡航される方のご参考になれば幸いです。

(2020年9月東京→大連)
chinalaw.hatenablog.com

(2020年12月上海→東京)
chinalaw.hatenablog.com

1 成田空港→浦東空港

1-1 チェックイン

現在、東京⇔上海間の直行便は週4便飛んでいますが、チケットが購入可能だったのは、毎週日曜日に飛んでいる全日空春秋航空の2社のみでした。その中でも全日空はエコノミークラスでも片道20万円近くしてあまりに髙いので、多少でも安い春秋航空で帰ることにしました。それでも自分がチケットを購入した時には10万円近くしましたので、普段は数万円で往復できる春秋航空からすると、やはり超高額な価格といえます。

(日中間の航空便の状況はこちらにてご確認ください。)

(以下日本時間)17時00分 チェックイン

春秋航空は成田空港のターミナル3からの出発になります。

成田空港のターミナル3には初めて来たのですが、LCC専用ターミナルということもあり想定以上にプレハブ感があり、ターミナル1、2との格差に面食らってしまいました。

春秋航空は20時に出発予定でしたので、18時に到着しましたが、到着した頃には、チェックインカウンターには思いの外長い行列が出来ていました。

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聞こえてくる言葉は中国語ばかりで、搭乗客の大半は中国の方、日本の方はかなり少数だったのではないかと思います。日本の方はもしかしたら昼間に飛んでいる全日空の方に多く乗っているのかもしれません。

この日は、クレーマーがチェックインカウンターの一つを占領してスタッフと口論を続けていたこともあり、チェックインの行列はなかなか進みませんでした。何を揉めていたのかはわかりませんが、おそらく手荷物のチェックインで発生する追加料金に関してだったのではないかと思います。LCCは手荷物を預ける場合、追加料金が発生することが多いので要注意です。

結局、自分がチェックイン出来たのは18時50分頃と、かなり時間がかかってしまいました。なお、春秋航空の手荷物預けで追加料金が発生した場合、支払いは現金のみクレジットカードや銀聯カードを使用することはできません。チェックインカウンターの近くにはATMが設置されていますので、追加料金が発生し、手持ちの現金が足りない場合にはATMでお金を引き下ろす等する必要があります。この点も要注意です。

また、チェックインを完了するにあたっては、

  • 中国大使館から発行される「健康コード」(健康码)
  • 国税関への健康申告及び申告後に発行されるQRコード

の2つのQRコードを入手していることが必要になります(国税QRコードについてはこちら)。

1-1-1 健康コード

2020年12月1日以降、日本から中国へ直行便で渡航する場合にも、中国大使館の発行する健康コードを入手することが必要となりました(中国大使館のHPはこちら)。

健康コードを入手するには、搭乗2日以内に在日中国大使館の指定する医療機関、クリニックにおいてダブル陰性証明、すなわちPCR検査及び抗体検査での陰性を証明する書類を作成してもらうことが必要となっています。

私の場合は搭乗日が日曜日でしたので、金曜日にPCR検査、抗体検査を受けることとしました。大使館によって指定されている医療機関、クリニックはかなりたくさんあるので、基本的には最寄りの医療機関等で対応すれば良いといえます。

(東京中国大使館の指定先医療機関等リストはこちら

多くの医療機関等においては、1日~2日以内での証明書発行をしてくれますが、医療機関によっては、翌日の証明書発行が困難で、且つ翌々日は営業していない、というところもあります。どういうことかというと、

金曜日に検査に行った場合、翌日土曜日の証明書発行が間に合わず、且つ、(搭乗日である)日曜日は営業していないため、日曜日までに証明書の取得が間に合わない

というところもあります。これは、日曜日搭乗及び搭乗2日以内の証明書取得という時間的制約による不都合ではありますが、そのため、日曜日に搭乗する方は可能な限り、即日又は翌日に証明書の発行を確約してもらえる医療機関等を選択することをおすすめします。なお、私が検査を行ったクリニックでの検査費用は約4万円かかり、かなり高額な印象を受けました。他の医療機関やクリニックはわかりませんが、ここでも相応の出費をする覚悟をする必要があります。

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ダブル陰性証明

ダブル陰性証明を入手した後、中国大使館上のHP上に掲載されているウェブサイトへアクセスし、健康コードの申請をします。

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健康コード申請画面

健康コードの申請においては、身分証(中国籍以外であればパスポート)及びダブル陰性証明の画像をアップロードすることが必要になります。なお、上記申請画面はスマートフォン及びPCのいずれからもアクセスできますが、私の場合スマートフォンでアクセスしたところ、上記の画像をアップロードすることができなかったため、やむなくPCからアクセスしました。

上記の申請をしたのは、土曜日で且つ春節期間中ではありましたが、3時間後くらいには申請は完了し、以下のような健康コードが発行されていました。

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健康コード
1-1-2 ビジネストラック、レジデンストラック

なお、2020年11月末日より実施されていた日中間のビジネストラック、レジデンストラックについては、日本の緊急事態宣言が発せられたことに伴い、2021年1月14日以降停止しており、利用不可となっています(詳細はこちら)。

1-2 搭乗

ターミナル3にはローソンがありますので、搭乗前に軽食や飲み物を購入したい場合にはここで購入しておくことをおすすめします。ちなみにフードコート、レストランは軒並み閉店していました。

19時30分 搭乗開始

ほぼ時間通りに搭乗開始となりました。

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搭乗率はどれくらいかはわかりませんが、私の座った3人がけの席は真ん中が空席になっており、全体的にも満席というほどではなく、8~9割くらいだったのではないかと思います。今回もやはり防護服、マスク、フェイスシールドのフル装備をした中国人の方を見かけました。意識高いですね。

春秋航空は過去に一度搭乗したことがあり、夜間飛行にもかかわらず、飛行中のアナウンスがかなりうるさかった印象がありますが、今回のフライトはほとんどアナウンスもなく、基本的に消灯されていましたので比較的穏やかに過ごせたように思います。ちなみに、LCCですので機内食等は出ません。

1-3 着陸後

(以下中国時間)22時30分~23時05分 着陸~降機

ほぼ予定到着時刻に到着しました。ただ、飛行機から降りられるまでは若干時間がかかり、30分強機内で待たされていました。

23時25分 健康申告

飛行場内に設けられたブースにて、税関職員に健康状態の申告をします。なお、大連の飛行場での申告の際は、日本語対応可能な職員もそれなりにいたような気がしますが、乗客の多くが中国の方ということもあってか、空港職員の日本語対応はほとんどなかったのではないかと思います。

日中の全日空便のラウンドはもしかすると異なるかもしれませんが、もし中国語に不安のある方は、予め通訳が可能な方と電話やチャットで対応できる連絡体制をとっておいた方が良いかもしれません(あるいは英語で話す)。

なお、この際に中国税関の健康申告QRコードが必要になります。

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健康申告ブース

23時35分 PCR検査

健康申告ブースでの申告を済ますとPCR検査です。

随分と長い導線を歩かされ、屋外のプレハブに設置されたブースでPCR検査を受けることになります。PCR検査は綿棒を鼻に突っ込むタイプのものを2回やられます。

大連ではPCR検査をする際に、それまで着けていたマスクを廃棄し、N95タイプのマスクを着けさせられましたが、ここではそのようなことは特にありませんでした。

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長い導線

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PCR検査ブース

23時43分 入国審査

PCR検査を受け終わると入国審査です。入国審査手続き自体は特段変わったことはありませんでした。入国を済ませると、荷物をピックアップし出口へ向かいます。

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0時02分 旅客情報登録

手荷物を受け取り外に出ると、今度は旅客情報登録をすることになります。

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掲げられているQRコードをスキャンして情報登録

これは健康コードや健康申告QRコードとはまた異なるもので、隔離先のホテルに移動する際に必要となるQRコードを入手するための情報入力になります。

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情報入力画面とQRコード

上記のQRコードを入手した後、今度は目的地となる区あるいは住居のある区ごとにブースが設置されており、そこでの登録を行うことになります。

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目的地ごとに設置されたブース

1時00分~1時40分 隔離先ホテルへ移動

上記のブースで登録を済ませた後、40分~50分待たされ、深夜1時頃に飛行場を出発することになりました。その間、全くやることがありませんし、体内時計は朝の2時ですのでかなり眠いです。その意味でも春秋航空での渡航はかなりしんどいです。お財布が許すあるいは会社持ちの場合には、日中の全日空に乗った方が良いと思います。

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移動のバス

同じ隔離先へ向かうのは自分を含め3名のみでしたが、大型バスに乗り込み、40分ほど移動しました。隔離先のホテルまで公安のパトカーが先導していたのですが、なかなか厳格だと思いました。

ホテルに到着し、バスから荷物を下ろすとまずは問答無用でトランクの消毒をされ、ホテルの入居手続きです。

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汚物は消毒!

2 集中隔離

2-1 入居

今回、私が隔離されたホテルは虹橋空港に近いSKY BIRD HOTEL(嘉虹酒店)というホテルでした。滞在費用は、三食込み14日間で5180元(滞在中の検査費用除く)です。

hotels.ctrip.com

ホテル自体は異様にスタイリッシュ感があり、キレイではあるのですが部屋は狭いです。

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そして何より辛いのは、

外がほとんど見えない

ということ。

窓こそ付いているものの、向かいの建物の壁しか見えず、なおかつ向かいも窓ですので、こちらのブラインドを上げればこちら側も向こうから丸見えということでブラインドを上げるに上げられないという難点があります。しかも、ブラインドの遮光性が極めて良いため、ブラインドを締め切って寝ると朝になっても日光が差し込まず、暗闇の中目を覚ますことになります。連日暗闇の中で目を覚ますのはなかなかにしんどいものがあります。

大連での隔離先ホテルからは、大きな窓から市街の町並みを見下ろすことが出来たのと比較すると、心理的圧迫感はそれなりのものです。

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ブラインドを開けてもそこは壁

大連での隔離先ホテルの滞在費用は7000元強で、値段だけでいえば今回のホテルより高いのですが、広さが2倍以上あった上に眺望が良かったことと比較すると今回のホテルの方が割高感はあります。

2-1-1 7+7政策

上海市では、他の都市と異なり7日間ホテルでの集中隔離を行い、その時点での異常がなければ残りの7日間は自宅で隔離をすることができるという政策が施行されています。

mp.weixin.qq.com

しかし、2020年11月以降、上海市内における市中感染と見られる例が見られ始めたことを受け、現在では上記の政策に基づく申請をしてもほとんど認められていないということです(上海日本総領事館の注意喚起はこちら)。

私自身も1週間で自宅に帰れることを期待して申請をしましたが、申請は認められず、結局2週間のホテル隔離を余儀なくされました。そのため、上海市内にご自宅がある方についても2週間のホテル隔離を想定した上で渡航することをおすすめします。

また、高齢者、妊婦、幼児がおり、ホテルでの集中隔離に適しない場合も、従前は初日のみホテル隔離を行い、その後自宅隔離をすることが認められていましたが、現在はこれについてもほとんど申請が認められていないということです。そのため、今後このような方、特に幼いお子様を連れての渡航を検討されている方は要注意です。

2-2 食事

食事は、1日3回朝の8時頃、昼の11時頃、夕方の17時頃にお弁当が配給されます。

食事の内容は、大連と同様

三食オール中華

です。

味は悪いとは言いませんが、喜んで食べられるような代物でもありませんし、やはり飽きます。

また、これはホテルによっても違いはありそうですが、今回のホテルについては食事の外売を頼むことができません(真空包装されているビスケット類、お菓子、カップ麺など、乾き物については良いそうです)。そのため、やはり食事対策という意味では渡航前に14日の隔離期間中の食料、飲料を持ち込むことをおすすめします。

ホテルは基本的にポットはあるものの、レンジはありませんので、食料を持ち込むにしてもお湯を沸かして食べられる麺類、スープ類が良いです。レンジで温める系統の食料は基本的に食べられません。

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とある日の三食

飲料は大連の時と同様、2週間分のペットボトル入り飲料水が、2週間分の日用品(洗顔料やシャンプー、トイレットペーパー等)と一緒に部屋に置かれています。酒類の外売もオーダー不可とされていますので、お酒好きな方は自らお酒を持ち込む等する必要があります。

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2週間分の水

2-3 検温等

入居の翌日には、ホテルに駐在している医療団と隔離対象者のWe Chatのグループチャットが作成され、そこで必要な連絡を取り合うことになります。

そして、毎日朝と昼間に自身で検温を行い、グループチャットの中で報告することになります。また、毎朝9時半~10時頃にスタッフが検温をしにきます。大連では検温の仕方がわからず、特段報告もしていませんでしたし、スタッフによる検温もありませんでしたが、その意味では今回はきちんと検温をしているといえます。

なお、大連では隔離期間中に抗体検査とPCR検査を行いましたが、今回は隔離終了前日の13日目にPCR検査のみを行うということです。費用は80元です。

3 終わりに

今回、隔離を開始したのが夜中の2時頃でしたが、隔離終了は隔離開始から14日ということなので、同じく真夜中ということになります。真夜中の帰宅が辛い場合には延泊してチェックアウトの時間をずらすことができるということではありますが、個人的には1秒でも早くホテルから出たいので、恐らく真夜中のチェックアウトをすることになるかと思います。

世界的なコロナ感染状況が昨年9月の時点よりも悪化しているということもあり、諸々制約が厳しくなっているように思いますが、今回の記事がこれから上海へ渡航することを予定している方のご参考になればと思います。

 

※2021年3月1日アップデート

2021年3月1日付けで在日中国大使館のHPにおいて、日本から中国への渡航に関する要求事項がアップデートされています。

www.china-embassy.or.jp

まず、これまで第三国から日本で乗り継ぎして中国へ渡航する場合の対応方法については明記されていませんでしたが、日本で乗り継ぎをする場合には、日本にて14日間の自主隔離をし、健康コードを取得した上で中国に渡航することが明記されました。

それに加えて、万が一コロナウイルスに感染してしまった場合の健康コードの申請方法が新たに追記されています。具体的には以下のとおりです。

  1. 居住地の病院で肺のCT検査またはX線検査を行い、診断証明書(肺に異常なしまたはコロナ感染が完治していると記載)及び、2回のPCR検査を行い(検査日時は24時間以上空けること)、陰性証明書を提出すること。
  2. 上記1の後、少なくとも14日間は自主隔離をし、健康状態に異常がないことをご確認の上、「自主隔離承諾書」にサインして提出すること。
  3. 搭乗2日前以内(検体採取日から起算)に中国駐日本大使館総領事館指定の検査機関で新型コロナウィルスPCR検査及び血清特異性IgM抗体検査を行い、ダブル陰性証明を取得して提出すること。

以上の次第で、健康コードの申請要件が格段に厳しくなっているうえ、渡航できるまでに必要な日数がかなり発生することになります(検査費用もかさみそうですね)。

そのほか、ワクチン接種によって抗体検査が陽性になった場合には、健康コードを申請する際に検査証明とワクチン接種証明書を提出することで救済される旨も記載されています。

外国法律と措置の不当な域外適用阻止弁法について

2021年1月に入って間もない2021年1月9日、中国商務部は「外国法律と措置の不当な域外適用阻止弁法」(阻断外国法律与措施不当域外适用办法、以下「本弁法」といいます。)を公布し、本弁法は同日付けで施行されました。本弁法は、米国政府がHuaweiに対する米国技術を使用した半導体の輸出禁止といった措置をはじめとした制裁措置を念頭に置いて定められたという見方がされていますが、この点について商務部門の記者会見においては、本弁法は特定の国家による制裁措置、特定の取引への制裁措置等への適用を念頭においたものではなく、あらゆる国家による制裁措置等への適用を想定しているとして明言は避けています。

本弁法の施行は、中国国外の主体と中国企業との間の取引関係に対して影響を与えていくことが想定されますが、今回は全16か条によって構成される本弁法の内容を解説してみたいと思います。

1 総論

1-1 法的根拠

本弁法は、国家安全法等の法律に基づいて商務部門により公布された部門規章であり、法源の中では法律、行政法規よりも下位のものになります(中国における法源はこちらをご参照ください)。本弁法の制定にあたり参照されたとされているEU連合のブロッキング法(European Union’s blocking statute(Council Regulation (EC) No 2271/96) )は、EU法上の最上位の法源である「法」(Regulation)であるのと比較すると、本弁法の中国法源における地位は低いといえます。

なお、以前も解説した信頼不能実体リスト規定や外商投資安全審査弁法も、国家安全法に紐づいた法令であり、本弁法と関連又はセットとして捉えることもできそうです。

 1-2 適用範囲

本弁法の適用対象については、以下のとおり定められています(本弁法第2条)。

  1. 国際法及び国際関係の基本準則に違反する外国法及び措置
  2. 中国公民、法人又はその他の組織(以下、総称して「中国公民等」といいます。)と、第三国(地域)及びその国民、法人又はその他の組織との正常な経済貿易、関連活動に対する不当な禁止、制限

1つ目の「国際法及び国際関係の基本準則に違反する外国法及び措置」については、それ以上の要件が定められておらず、要件としてはかなり抽象的なものであり、当局の裁量が広く認められている形になっています。ブロッキング法はAnnexにおいて適用対象となる外国法又は措置が具体的に列挙されているのとは異なっています。

なお、上記1及び2を以下では総称して、適用対象制限等といいます。

2 適用対象制限等に対する禁止令

本弁法に基づき、商務主管部門は適用対象制限等の承認、執行、遵守を禁止する禁止令(以下「禁止令」といいます。)を発出することができますが(本弁法第7条第1項)、本弁法で定められているそのプロセスは以下のとおりです。

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2-1 国務院商務主管部門への報告

本弁法上、中国公民等が適用対象制限等を受けた場合、30日以内に国務院商務主管部門へ報告をしなければならないとされています(本弁法第5条)。ただ、具体的な報告のプロセス等については今の時点では明確にされていません。

なお、ここにいう「中国公民等」は、前述のとおり中国の公民、法人その他組織を指しますが、例えば外国企業の中国子会社、あるいは海外にいる中国人、中国企業の海外拠点等も中国公民等に含まれるものと理解して良いかは文言からは一義的には明らかではなく、解釈の余地があるといえます。

2-2 主管部門による評価・確認

中国公民等からの報告がなされた場合、外国法と措置の不当な域外適用がなされているか否かの評価、確認が行われることになりますが、当該評価・確認にあたっては以下の要素を考慮するものとされています(本弁法第6条)。

  • 国際法と国際関係の基本準則に違反しているか否か
  • 中国の国家主権、安全、発展利益に対して与えうる影響
  • 中国公民等の合法権益に対して与えうる影響
  • その他考慮すべき要素

上記に掲げられた考慮要素も、抽象的、観念的な要件の域を出ず、当局に広範な裁量が残されているといえます。

2-3 禁止令の発布

2-2で記載した要素を総合判断し、外国法と措置に不当な域外適用がなされていると認定された場合には、商務主管部門は、禁止令を発布することができます。

また、一旦発布された禁止令は、実際の状況に基づいて中止又は撤回をすることができるものとされています(本弁法第7条第2項)。

2-4 禁止令の遵守免除

禁止令の遵守をすることにより、かえって困難や支障が生じることもありうることから、本弁法においては、中国公民等に、商務部門に対して禁止令の遵守免除を申請する余地を認めています(本弁法第8条第1項)。

禁止令の遵守免除を申請する場合、申請者は商務主管部門に対し、免除申請をする理由及び免除申請をする範囲等の内容を明記したうえで書面による申請を行い、商務主管部門は原則として申請を受理した日から30日以内に申請を認可するか否かの決定をしなければならないとされています(本弁法第8条第2項)。

3 救済措置

3-1 司法上の救済

禁止令の遵守免除が申請されている場合を除き、「当事者」が、禁止令の範囲内にある適用対象制限等を遵守した場合(すなわち禁止令に反して適用対象制限等を遵守した場合)で、これにより中国公民等の合法権益が侵害された場合、中国公民等は人民法院に対して訴訟を提起し、「当事者」に対して損害賠償請求をすることができるとされています(本弁法第9条第1項)。

また、禁止令の範囲内にある、外国法に基づく判決、裁決が中国公民等に対して損害を与えた場合、中国公民等は人民法院に対して、当該判決、裁決において利益を得た「当事者」に対して損害賠償請求することができるとされています(本弁法第9条第2項)。

適用対象制限等を遵守した当事者としては、あくまで外国法や措置を遵守したのであり、これによって中国公民等に損害を与えたとしても、正当な理由や不可抗力を理由として違約責任に対する抗弁をすることができると考えられます。そのような中で、本弁法の上記規定は、禁止令に違反して適用対象制限等を遵守した当事者に対してはそのような抗弁の主張を認めず、損害賠償責任を負わせるものとし、権利侵害を受けた当事者の救済を図ろうとしたものと理解されます。

但し、上記にいう「当事者」とは、中国国内にいる者に限るのか、あるいは中国国外にいる者も含むのかという点は明らかではありません。仮に中国国外にいる者を含むとした場合には、本弁法が域外適用可能ということになりますが、単なる部門規章に域外適用の効力を持たせることができるのか、実際に人民法院に対して訴訟を提起したとして国外でそれを執行することができるのか、といった点が問題点としては残るように思われます。

3-2 政府によるサポート

上記司法上の救済のほか、中国公民等が禁止令に基づき、外国法と措置を遵守せずこれにより重大な損失を被った場合、政府の関連部門は具体的な状況に応じて必要なサポートを行うものとされています(本弁法第11条)。

もっとも、具体的にどのようなサポートが行われるのかについては不明です。

3-3 政府による対抗措置

適用対象制限等に対して、中国政府は実際の状況と必要に応じて、必要な対抗措置を講じることができる旨定められています(本弁法第12条)。

具体的にどのような対抗措置を講じるかは中国政府の政治的判断ということになると思われますが、信頼不能実体リスト規定で定められている対抗措置が参照されることも想定されます。 

chinalaw.hatenablog.com

4 おわりに

本弁法は総じて規定内容が抽象的なものにとどまるため、予測可能性が低く、また、実際に本弁法を適用した場合にそれが機能するのかという点は未知数です。

近時の日本と中国の場合、政治的な対立、摩擦は大きくは顕在化していないため、日本との関係では本弁法によるインパクトはさほど大きくないと思われるものの、米中間の対立という時代背景を反映した極めて政治的な法令として、その概要を把握しておくことも意義はあるかと思われます。

外商投資安全審査弁法について

2020年12月19日に、中国において新たな外商投資関連の法令となる外商投資安全審査弁法(外商投资安全审查办法、以下「本弁法」といいます。)が公布されました。施行日は2021年1月18日です。

かつて外資が中国に投資を行うにあたっては、商務部門による認可(批准)が必要とされていたのが、2018年に「外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法」(外商投资企业设立及变更备案管理暂行办法)が施行されたことに伴い、原則として商務部門への届出のみで足り、認可は不要とされました。

そして、2020年1月に外商投資法が施行され、外商投資企業の設立等においては届出も不要となり、会社の設立登記のほかは外商投資情報報告(外商投资信息报告)をすれば足りることとされ、外商投資企業の設立等が更に開放されました。他方で、外商投資の間口を広げる代わりに、中国の安全に影響を与える、又は影響を与える恐れがある外商投資に対しては安全審査を行うことが外商投資法にて定められました(外商投資法第34条)。

本弁法は外商投資法及び国家安全法に基づいて、外商投資における安全審査に関する事項を定めたものであり、今後の外商投資実務上重要な法令となるものと思われます。

1 本弁法の適用対象

1-1 外商投資の定義

本弁法の適用対象となる「外商投資」は以下のとおり定義されています(本弁法第2条第2項)。

外国投資者が直接又は間接的に中国国内で以下の投資活動を行うこと。

  1. 外国投資者が単独又はその他の投資者と共同で中国国内で新規のプロジェクトに投資し、又は企業を設立すること
  2. 外国投資者がM&Aにより中国国内の持分又は資産を取得すること
  3. 外国投資者がその他の方法により中国国内で投資すること

なお、外商投資法において定められている「外商投資」の定義は以下のとおりです。

外国の自然人、企業又はその他組織が直接又は間接的に中国国内で以下の投資活動を行うこと。

  1. 外国投資者が単独又はその他の投資者と共同で中国国内で外商投資企業を設立すること
  2. 外国投資者が中国国内の株式、持分、財産持分又はその他の権益を取得すること
  3. 外国投資者が単独又はその他の投資者と共同で中国国内で新規のプロジェクトに投資すること
  4. 法律、行政法規又は国務院の規定するその他の方法による投資

本弁法と外商投資法における外商投資の定義、範囲については上記のとおり若干の違いがありますが、実質的な差異はあまりないものと思われます。

1-2 本弁法の適用対象となる外商投資

外商投資のうち、以下の要件を満たすものについては、外国投資者又は中国国内関連者は投資を行うに先立って安全審査業務機関に対して申告をする必要があります(本弁法第4条第1項)。

  1. 軍需産業軍需産業関連等、国防安全に関係する領域への投資及び軍事施設と軍需産業施設周辺地域への投資をする場合
  2. 国家安全に関係する重要な農産物、重要なエネルギー・資源、重大な装備製造、重要なインフラ設備、重要な運輸サービス、重要な文化製品・サービス、重要な情報技術・ネットワーク製品とサービス、重要な金融サービス、重要技術及びその他の重要領域への投資をし、且つ投資した企業の実際のコントロールを取得する場合

そして、上記にいう「実際のコントロール権を取得する」場合とは、以下のいずれかの場合を含むとされています(本弁法第4条第2項)。

  1. 外国投資者が企業の50%以上の持分を取得する場合
  2. 外国投資者の取得する企業の持分が50%未満であるが、その保有する表決権が董事会、株主会又は株主総会の決議に対して重大な影響を有する場合
  3. その他、外国投資者が企業の経営政策、人事、財務、技術等に対して重大な影響を与えることができる場合

安全審査の申告を行う必要がある対象となる外商投資のうち、特に日系企業に関係があると思われるのは第2項目であると思われます。

ただ、本弁法上の規定はかなり抽象的な定めとなっており、何をもって「国家安全に関係する」といえる事業か、また、どのような要件を満たすと「重大」、「重要」な各事業に該当するのかという点については一切基準を示していません。

本弁法上、本弁法に基づき安全申告をすべき外商投資について申告をせずに投資を実行した場合には、工作機制弁工室は投資実施前の状態に戻すことで、国家安全への影響を除去することまで可能とされており(本弁法第16条)、また、信用不良記録が国家信用システムに記録されるほか、処罰を受ける可能性もありますので(本弁法第19条)、曖昧なまま投資を実行した場合のリスクが髙いといえます。そのため、安全審査の申告対象に該当するか不明な場合には、予め工作機制弁工室に対して照会するのが無難と思われます(本弁法第5条)。 

2 審査の実施

2-1 主管部門

まず、外商投資の安全審査については、安全審査工作機制(安全审查工作机制)が主管するとされており、工作機制弁工室は国家発展改革委員会に設置され、発展改革委員会及び商務部が、安全審査の日常業務を司ることとされています(本弁法第3条)。

2-2 審査決定

工作機制弁工室は、当事者から申告を受けた場合、提出書類を受領してから15営業日以内に安全審査を実施する必要があるか否かについて決定し、書面により当事者に対して通知をするものとされています(本弁法第7条第1項)。当該決定がなされるまでの間、当事者は投資の実施をすることはできません。

なお、安全審査は不要と判断された後に、投資方案が変更され、国家安全に影響を与え又は与える可能性がある場合には、改めて申告をする必要があります(本弁法第12条)。

2-3 安全審査

安全審査は、一般審査と特別審査の2種類に分類されます。

2-3-1 一般審査

工作機制弁工室が安全審査を実施することを決定した場合、決定日から30営業日以内に一般審査を完了させるものとされており、審査の結果、当該投資が中国の国家安全に影響を与えないと判断された場合、工作機制弁工室は安全審査通過の決定をすることになります(本弁法第8条)。

2-3-2 特別審査

他方、国家安全に影響を与える、又は影響を与える可能性があると判断された場合、特別審査が開始され(本弁法第8条第2項)、以下にしたがった決定がなされます(本弁法第9条第1項)。

  • 申告された外商投資が国家安全に影響を与えないと判断された場合には、安全審査通過の決定をする
  • 申告された外商投資が国家安全に影響を与えると判断された場合には、投資禁止の決定をする
  • 条件を付加することで国家安全への影響を除去でき、且つ、当事者が書面にて付加条件を承諾する場合、条件付きでの安全審査通過の決定をすることができる

特別審査は、原則として特別審査の決定をした日から60営業日以内に完了するものとされている一方、状況によっては審査期間が延長される可能性もあります(本弁法第9条第2項)。

ただ、一般審査にしても特別審査にしても、国家安全に影響を与えるか否かの判断についてどのような判断基準があるのかは今の時点では不明であり、予測可能性はかなり低いと思われます。今後、詳細な判断基準が更に制定されることも想像されます。

2-3-3 投資方案の変更、撤回

当事者は安全審査機関中、投資を実施することができない一方、投資方案を変更又は撤回することができます。

投資方案を撤回した場合には、安全審査は終了となります。他方、投資方案の変更がなされた場合、投資方案の変更がなされた日から改めて審査期間が計算されることとなります(本弁法第11条)。

2-3-4 安全審査の結果及び効果

安全審査の結果及びそれに対する対応は以下のとおりです(本弁法第12条)。

決定内容 対応
安全審査通過 投資可能
投資禁止 投資不可
既に投資済みのものについては、期限内に持分又は資産の処分及びその他の必要な措置を講じ、投資前の状態に戻し、国家安全への影響を除去する
条件付き安全審査通過 付加された条件に基づいて投資を実施

3 終わりに

以上、新たに施行される外商投資安全審査弁法について概観しました。

本文中でも述べたとおり、安全審査の対象となる外商投資の範囲は必ずしも明らかではなく、また、安全審査にあたっての基準も特に定められておりませんので、今後外商投資を行うにあたっての予測可能性が失われないか若干懸念されるところではあります。

今後、更に詳細な細則や規範が制定される可能性も十分にありますので、引き続き注視することが必要かと思われます。

中国から日本への渡航、そして隔離(東京編)

2020年9月に日本から中国に帰国し、以前のエントリーでは大連までの道のりと大連での隔離生活の様子をご報告しました。

chinalaw.hatenablog.com

そして今回、年末を家族と過ごすべく、常駐先の上海から日本に一時帰国しました。12月28日より外国人一律の日本入国禁止措置が講じられるということもあり、水際措置の変わり目に帰国したことになります。今回は上海から日本に帰国するまでの様子をご紹介し、これから中国から日本に帰国される方のご参考にしてもらえればと思います。なお、今回の帰国は11月30日からスタートした日中間ビジネストラック、レジデンストラックは利用しない通常の帰国になります。

1 浦東空港(出国)

1-1 健康報告

1-1-1 中国税

自宅からタクシーに乗り、約3か月ぶりの浦東空港ターミナル2に到着。全日空のチェックインカウンターへ向かうと思いのほか長蛇の列(写真を取り損ねました)。チェックインの際にスタッフに聞いたところ、本日の全日空のフライトは乗客率はほぼ100%とのこと。

また、思いのほか中国の方の数も少なくありませんでした。これも聞いたところ、ビジネスの方以外に、留学、そして日本居住者の再入国が多いとのことでした。

さて、チェックインを済ませると出国審査をすることになりますが、現在は日本から中国に来る時と同じように、予め中国税関への健康申告をすることが必要となります。QRコードがそこらじゅうに貼ってありますので、それを読み込んで関連情報を入力し、QRコード(健康二维码)を取得し、スクリーンショット保存しておきます。

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事前に自主的にPCR検査を行い、陰性でしたが間違って陽性にチェックしてしまいました。

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健康QRコード

出国審査に入るゲートの手前に、上記の健康QRコードを提示する場所があります。

筆者は、出発3日前に上海のローカル病院で念のためPCR検査を受け陰性でしたが、健康申告にあたって、「結果は陽性でしたか」という質問に対して「是(Yes)」とチェックしてしまいました。その結果、出国審査前に上記QRコードを提示した際に、職員から「陽性だったんですか?」と止められてしまいました。

陰性でしたと説明したところ、健康申告の情報を修正し、改めてQRコードを取得した上で中に進むことができました。

1-1-2 日本厚労省 

国税関への健康報告のほか、今回は厚労省向けの健康報告を予め行うことが必要でした。こちらは出国審査の前でも後でも大丈夫で、私も含め、殆どの人が搭乗ゲートの周りのベンチに座りながら入力していました。

生年月日や日本での滞在先、過去14日の滞在歴など、中国税関向けの健康報告と殆ど同じような内容を入力し、こちらもQRコードを取得します。

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 こちらのQRコードは飛行機への搭乗時及び日本到着時に提示します。

1-2 出国審査通過後

ANAのチェックインカウンターこそ人がいっぱいでしたが、浦東空港ターミナル2の中はがらんとしており、およそ平常時の様子ではありませんでした。

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浦東ターミナル2から出発する便もわずかのみ

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免税店もほとんどゲストは見られない

2 浦東空港⇒成田空港

搭乗したNH920便は、元々13時05分出発の予定でしたが、機内の消毒作業のため13時05分搭乗開始、13時30分出発に。機内は言われていたとおりほぼほぼ満席でした。

ちなみに、日本から大連へ飛ぶ際に搭乗したJAL便の機内食は簡易なランチボックス形式でしたが、今回上海から成田へ飛ぶANA機内食は通常の機内食でした。ただ、これは何もJALがしょぼいという話ではなく、中国行きの機内食については中国政府からのオーダー、すなわち機内でなるべくマスクを外して食事をする環境と時間を作らせるな、という要請が出されているため、やむなく簡易なランチボックスを提供しているのだそうです。なお、一時大連でコロナの感染が拡大した際には、ランチボックスすら提供不可で飴玉しか出せなかったこともあるそうです。

フライト時間約2時間15分、日本時間の16時35分頃には成田に到着しました。

3 成田空港

成田空港に着陸した後、検疫所が混雑しているということで機内にて20分ほど待機する形となりました。そして、その後機内の乗客を3グループ(約60人ごと)に分けて降りてくださいというアナウンスがあり、順次飛行機を降りることに。

飛行機を降りると、検疫所に向かうことになります。

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検疫所に続く行列

その途中で「健康カード」を提示する場所があります。健康カードは機内で渡されるA4のペライチの紙で、自主隔離期間(滞在期間)と自主隔離場所(待機場所)を記入する箇所があります。機内で記入しても良いですし、健康カード提示場所にいる職員に記入してもらうことでも構いません。

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健康カード

記入した健康カード、QRコードとパスポートの3点を準備して、検疫ブースに向かいます。検疫ブースでは、上記の3点を提示し、改めて滞在先と滞在先までの移動手段について口頭で質問されます。特に問題がなければ青い紙を渡されて、検疫ブースでの手続は終わりです。

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個人的には、この後にPCR検査をやるものと思っていましたが、案内された順路にしたがって進んでいくとなんともう入国審査ブース。しかも、日本人は普通に顔認証レーンで通過して良いということで、上記の青紙を入国審査官に見せることもなく、入国。

そして、荷物をピックアップ。荷物は職員が予めずらりと並べてくれていました。

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ずらりと並べられた荷物達

荷物をピックアップすると、次は最後の税関申告です。

 

「あれ、PCR検査は?税関通ったあと?」

 

などとざわつく気持ちを抑えつつ、税関申告を行いゲートを出ると、そこは空港の出迎えエリアでした。

というわけで、

まさかのPCR検査なしの入国!!

が完了してしまいました。

入国者は公共交通機関に乗らないでとは言われていますが、見たところ特に入国者かどうかが本当に確認されているのかはよく分かりませんでした。

また、入国者の位置情報をトレースするためのアプリ等のインストールも特に求められていませんし、入国後の位置情報は多分ですが、特段把握のしようがないのではないかと思います(どっかでトレースされているのかもしれませんが…)。一応、QRコードを取得する際に、所在を確認するために連絡することがあるとして連絡先(電話番号、メールアドレス)を伝えているので、連絡が来るのかもしれませんが、電話やメールでは何とでも言えてしまうのであまり意味はなさそうです。

中国での厳しい入国を3か月前に経験した身としてはあまりのガバガバっぷりに帰国早々大きな衝撃を受けてしまいました。

報道を見ている限り、少なくともイギリスからの帰国者についてはPCR検査を行っているように思いますが、なぜ今回中国からの入国にあたってPCR検査なく入国できてしまったのかは非常に謎です(もしかすると、コロナ感染の疑いがある人についてはPCR検査受けていたのでしょうか…)。

現在中国から日本に渡航する際には、PCR検査の結果が陰性であることの証明等も特に求められていませんので、要するに自己申告だけで検査なく中国から200人あまりの人を入国させてしまっているということになります(逆に、日本から中国に渡航するにあたっては現在、搭乗2日以内のPCR検査の陰性と抗体検査の陰性のダブル陰性であることが必要とされています)。

他の国や地域からの入国者については異なるのかどうか分かりませんが、何にせよ水際対策としては非常に問題なのではないかと思わされました。

中国個人情報保護法草案(意見募集稿)について

前回の記事で中国の個人情報保護法草案(以下「本草」といいます。)が制定された旨を紹介しました。
chinalaw.hatenablog.com

その後、10月21日に本草案の内容が公開され、2020年11月19日までの意見募集にかけられました。今回は前回の記事に続き、本草案の内容を紹介していきたいと思います。

1 概論

1-1 法律の構成

本草案は、前情報通り全8章、70か条の条文によって構成されています。章立てとしては以下のとおりです。

  • 第一章 総則
  • 第二章 個人情報処理規則
     第一節 一般規定
     第二節 センシティブ個人情報処理規則
     第三節 国家機関の個人情報処理に係る特別規定
  • 第三章 個人情報越境提供規則
  • 第四章 個人情報処理活動における個人の権利
  • 第五章 個人情報処理者の義務
  • 第六章 個人情報保護の職責を履行する部門
  • 第七章 法律責任
  • 第八章 附則

1-2 関連事項の定義

個人情報に関連する各種の概念について、本草案で定められている内容を整理すると以下のとおりです。

概念 定義
個人情報(个人信息) 電子又はその他の方式により記録される、識別され又は識別が可能な、自然人の各種情報であり、匿名化処理後の情報を含まない(本草案第4条第1項)
個人情報の処理(处理个人信息) 個人情報の収集、保存、使用、加工、移転、提供、公開等の活動を含む(本草案第4条第2項)
センシティブ個人情報(敏感个人信息) 一旦漏えい又は違法に使用すると、個人が差別を受けるか、人身、財産の安全に重大な危害を被る可能性のある個人情報をいい、種族、民族、宗教・信仰、個人の生体的特徴、医療健康、金融口座、個人の行動歴等の情報を含む(本草案第29条第2項)
個人情報処理者(个人信息处理者) 個人情報の処理事項(処理の目的、処理方式等)を自ら決定する組織、個人をいう(本草案第69条第1号)
自動意思決定(自动化决策) 個人情報を利用し、個人の行為・習慣、関心・嗜好又は経済、健康、信用の状況等について、コンピュータプログラムによって自動的な分析、評価を行ったうえで意思決定を行う活動をいう(本草案第69条第2号)
非識別化(去标识化) 個人情報を処理することで、更なる情報がなければ特定の自然人を識別することができないようにするプロセスをいう(本草案第69条第3号)
匿名化(匿名化) 個人情報を処理することにより、特定の自然人を識別できず、復元できなくするプロセスをいう(本草案第69条第4号)

2 適用対象

2-1 原則

個人情報保護法は、原則として中国国内で自然人の個人情報を処理する活動に対して適用されるとしつつ、以下の場合には、中国国内の自然人の個人情報を中国国外で処理する活動に対しても適用されます(本草案第3条)。

  1. 中国国内の自然人に商品又はサービスを提供することを目的とする場合
  2. 中国国内の自然人の行為を分析、評価する場合
  3. 法律、行政法規に定めるその他の場合

上記のうち第1項目については、例えば越境ECで中国の消費者向けに商品を販売するような場合が典型的な例として想定されます。近時日中間の越境ECが益々活発している状況下においては、越境ECに携わる日本国内の事業者としては中国の個人情報保護法に注意しなければならない状況が増えるかもしれません。

なお、この場合の中国国外における個人情報保護者は、中国国内に専門機関又は指定代表を置き、個人情報保護の関連事務の処理に責任を負わせるとともに、関係機関の名称又は代表の氏名、連絡先情報等を、個人情報保護の職責を履行する機関に提出することが必要です(本草案第52条)。

2-2 例外

但し、自然人が個人又は家庭の事務により個人情報を処理する場合には、個人情報保護法の適用外となることが、附則において規定されています(本草案第68条第1項)。

3 個人情報の処理

3-1 個人情報の処理にあたっての基本原則等

個人情報の処理にあたって遵守すべき基本原則、遵守事項として、以下のようなものが定められています。

信義誠実の原則 個人情報の処理にあたっては適法で正当な方法を採用し、信義誠実の原則を遵守しなければならず、詐欺、誤導等の方式を通じて個人情報を処理してはならない(本草案第5条)
最小範囲の原則 個人情報の処理には明確で合理的な目的がなければならず、且つ、処理の目的を実現できる最小範囲にとどめなければならず、処理の目的と関係のない個人情報を処理してはならない(本草案第6条)
公開透明の原則 個人情報を処理するにあたっては公開、透明の原則を遵守し、個人情報の処理規則を明示しなければならない(本草案第7条)
個人情報の正確性 処理の目的を実現するため、処理する個人情報は正確なものとし、遅滞なく更新されなければならない(本草案第8条)

個人情報安全規範(个人信息安全规范、以下「安全規範」といいます。)においては、最小範囲、公開透明の原則が定められていましたが(安全規範第4条)、本草案ではこれに加えて個人情報の処理にあたっての信義誠実の原則が加えられています。

3-2 個人情報の処理規則

個人情報処理者が個人情報の処理をすることができるのは、以下のいずれかに該当する場合とされています。

  1. 個人の同意を得た場合
  2. 個人を一方の当事者とする契約の締結又は履行に必要な場合
  3. 法定の職責又は法定の義務の履行に必要な場合
  4. 突発的公衆衛生事件への対処又は緊急事態下における自然人の生命・健康や財産の安全の保護に必要な場合
  5. 公共の利益のための報道、世論監督等の行為をするために合理的な範囲内で個人情報を処理する場合
  6. 法律、行政法規に定めるその他の場合

個人情報の処理をするには、個人の同意を得ることを基本としつつも、同意を得ずに個人情報を処理することができる場合について明確にしました。

民法典においては、

  1. 自然人又はその監護者が同意する範囲内で合理的に個人情報を処理する行為
  2. 自然人が自ら公開し又はその他既に適法に公開している個人情報について合理的に処理する行為(自然人が明確に拒絶し又は個人情報を処理するとその重大な利益を侵害する場合を除く)
  3. 公共の利益又は自然人の合法権益を維持するために合理的に実施するその他行為

について、個人情報処理者は民事上の責任を負わないと定められていますが(民法典第1036条)、個人情報保護法は個人情報を適法に処理できる場合について更に拡大し、個人情報を利用した事業、活動を比較的広めに保護したものともいえます。

4 個人情報の処理に対する個人の権利

個人情報の処理に対する個人の権利として、本草案では以下のような権利が定められています。

知情権、決定権 個人はその個人情報の処理について知る権利、決定権を有し、自身の個人情報に対する他人の処理を制限又は拒否する権利を有する(本草案第44条)
閲覧、複製権 個人は個人情報処理者からその個人情報を閲覧し、複写する権利を有し、個人がその個人情報の閲覧、複写を請求した場合、個人情報処理者は速やかに提供しなければならない(本草案第45条)
更生、補正権 個人はその個人情報が不正確又は不完全であることを発見した場合、個人情報処理者に訂正、補足を請求する権利を有し、個人がその個人情報の訂正、補足を請求した場合、個人情報処理者はその個人情報を確認し、速やかに訂正、補足しなければならない(本草案第46条)
削除権 以下にいずれか1つの事由ある場合、個人情報処理者は自主的に、又は個人の請求を受けて、個人情報を削除しなければならない(本草案第47条)
・合意した保存期間が満了したか、処理の目的が実現された場合
・個人情報処理者が商品又はサービスの提供を停止した場合
・個人が同意を撤回した場合
・個人情報処理者が法律、行政法規に違反したか、合意に違反して個人情報を処理した場合
・法律、行政法規に定めるその他の事由
説明権 個人は個人情報処理者に対し、その個人情報処理規則について説明を求める権利を有する(本草案第48条)

 また、個人情報の処理により、個人情報の権益が害された場合には、個人がこれによって被った損害又は個人情報処理者がこれによって得た利益に基づいて(個人情報処理者が)賠償責任を負うこと、個人の損害又は個人情報の利益を確定することが困難な場合には裁判所が実際の状況に基づいて賠償金額を確定できることが定められています(本草案第65条)。

この損害賠償責任については、個人情報処理者が自己の無過失を立証できる場合には責任の減免が認められることになっており、立証責任が個人情報処理者に転換されています。

5 画像採集と個人身分識別等

5-1 画像採集、個人身分識別装置

近時、特に中国においては公共の場所における画像採集や個人の身分を識別する設備が普遍的に設置されるようになっているものの、このような設備を設置することについては特段法令が定められていないのが現状です。

そのような中で2019年2月にAIによる個人身分識別を用いた安全・防犯企業による250万件の個人情報流出事故(流出の疑いのある件数は680万件)が生じたという背景もあり、このような設備に関する法律上の規定を設けることが要請されていました。

本草案においては、公共の場所に画像採集、個人の身分を識別する設備を取り付けるにあたっては、公共の安全を維持・保護するために必要であり、国の関連規定を遵守したうえ、目立つ位置に標識を設置すること、そして、収集した個人の画像、個人の身分特徴情報(个人身份特征信息)は公共の安全を維持・保護する目的のみにしか用いることができず、原則として公開し、又は他人に提供してはならないという規定が置かれました(本草案第27条)。

本草案では上記一か条のみが設けられるのみで、該当する設備について、国家基準の遵守や許認可等に関しては特段明確にはしておらず、また、これらの設備により収集した個人情報の保管、管理等について、特殊な要求があるのかといった点についても特段明確にはされていません。したがって、この点については更なる立法化が待たれるところです。

5-2 自動意思決定

また、近時はビッグデータを利用したターゲティング広告も広く見られるようになったことに伴い、本草案においては、自動意思決定(Automated decision-making)に関しても規定を置きました。

個人情報を利用して自動意思決定を行うにあたっては、意思決定の透明性及び処理結果の公平性、合理性を保証しなければならず、自動意思決定の方式により商業マーケティング、情報プッシュ配信を行うにあたっては、個人の特徴に合わせた情報以外の選択も提供しなければならないとされています(本草案第25条)。

また、個人が自動意思決定によりその権益に重大な影響を受けると認識する場合、個人情報処理者に対して説明を求めることができ、自動意思決定の方法のみによって意思決定を行うことを拒否することができるとして、個人が有する権利についても定めています。

6 個人情報の越境提供

6-1 個人情報の越境提供の要件

個人情報の越境移転、越境提供に関しては、2019年6月に公布された個人情報越境移転弁法(意見募集稿)(个人信息出境办法(征求意见稿)、以下「移転弁法」といいます。)において定められておりましたが、移転弁法が制定される前に、個人情報越境移転について個人情報保護法で新たに定めが置かれることになりそうです。

移転弁法においては、個人情報が越境移転する場合、ネットワーク運営者は、その所在地の省級インターネット情報部門に対して個人情報越境移転に係る安全評価を申請しなければならないとされていました(移転弁法第3条第1項)。

しかし、これに対して本草案は以下の場合に個人情報越境移転ができることを定めています(本草案第38条)。

個人情報処理者が業務等の必要により、確かに中国国外に個人情報を提供しなければならない場合で、以下の少なくとも1つを満たしている場合。

  1. 本法第40 条の規定に基づき、国家インターネット情報機関による安全評価に合格している場合
  2. 国家インターネット情報機関の規定に基づき、専門機関による個人情報保護認証を行っている場合
  3. 国外の受領者と契約を締結する場合、双方の権利及び義務を約定し、且つ、その個人情報処理活動が本法に規定する個人情報保護基準に達するよう監督している場合
  4. 法律、行政法規又は国家インターネット情報機関が定めるその他の条件

インターネット情報部門による安全評価に合格していることは、個人情報の越境提供が可能な場合の一つされていますが、逆に越境提供にあたっての必要条件ではなくなっています。特に上記第3項で個人情報受領者との契約が締結されており、その契約内容が個人情報保護法の満たす保護基準を満たせば個人越境提供ができるということになっていますので、移転弁法に比べると個人情報の越境提供にあたっての条件がかなり緩和されたともいえます。

但し、重要情報インフラ運営者及び処理する個人情報が国家インターネット情報機関の規定数量に達している個人情報処理者は、中国国内で収集し、生じた個人情報を国内で保存しなければならず、確かに国外に提供する必要がある場合は、原則として国家インターネット情報機関による安全評価に合格しなければならないとも定められており(本草案第40条)、この点は留意が必要といえます。

6-2 越境提供に対する同意

個人情報処理者が中国国外に個人情報を提供する場合、個人に対して、国外の受領者の身分、連絡先情報、処理の目的、処理方式、個人情報の種類及び個人が国外の受領者に対して本法規定の権利を行使する方式等の事項を告知したうえ、個人の単独の同意を得ることが必要です(本草案第39条)。

6-3 個人情報保護のための措置

本草案では、以下のとおり中国の個人情報保護を損なうような国外における行為に対し、一定の措置を講じることができることを明らかにしています。

措置を講じる相手 内容
国外の組織、個人 中国国民の個人情報の権益を損なうか、中華人民共和国の国家の安全、公共の利益を脅かすような個人情報処理活動に従事する場合、国家インターネット情報機関はそれを個人情報提供禁止リストに登録することができ、公告したうえ、そのような組織、個人への個人情報の提供を制限又は禁止する等の措置を取る(本草案第42条)
国家又は地域 個人情報の保護に関して中国に対し差別的な禁止、制限又はその他類似の措置を取った場合には、中国は実際の状況に応じて当該国家又は当該地域に対し相応の措置を取ることができる(本草案第43条)

7 個人情報処理者の遵守事項

7-1 個人からの同意取得に関する事項

個人情報処理者が個人情報の処理について同意を取得するにあたっては、以下の事項について遵守する必要があります。

7-1-1 同意の再取得

個人情報の処理の目的、処理方式及び処理する個人情報の種類に変更が生じた場合は、個人の同意を取得し直さなければならない(本草案第14条第2項)

7-1-2 商品等提供拒否の禁止

原則として個人がその個人情報の処理に同意していないか、その個人情報の処理に対する同意を撤回したことを理由に、商品又はサービスの提供を拒否してはならない(本草案第17条)

7-1-3 個人への告知

個人情報の処理をするにあたっては、原則として目立つ方法によって、明快で分かりやすい説明で、以下の事項を個人に告知しなければならない(本草案第18条第1項)

  • 個人情報処理者の身分及び連絡先情報
  • 個人情報の処理の目的、処理方式、処理する個人情報の種類、保存期限
  • 個人が本法に規定する権利を行使する方法及び手続き
  • 法律、行政法規に告知すべきであると定めるその他の事項
7-1-4 個人情報の第三者提供

個人情報処理者が第三者に対してその処理する個人情報を提供する場合、個人に第三者の身分、連絡先情報、処理の目的、処理方式及び個人情報の種類を告知したうえ、個人の単独の同意を取得しなければならず、第三者がもとの処理の目的、処理方式を変更する場合は、改めて個人への告知を行い、同意を取得し直さなければならない(本草案第24条)

7-1-5 公開された個人情報の処理

個人情報処理者がすでに公開されている個人情報を処理するにあたっては、当該個人情報が公開された当時の用途に合致していなければならず、当該用途に関する合理的な範囲を超えた場合、本法の規定により個人に告知したうえその同意を取得しなければならない(本草案第28条第1項)

なお、個人情報が公開された時点で用途不明であった場合、個人情報処理者は合理的かつ慎重に公開された個人情報を処理しなければならず、すでに公開された個人情報を利用して個人に重大な影響を及ぼす活動を行うにあたっては、個人情報保護法の規定により個人に告知したうえその同意を取得しなければならない(本草案第28条第2項)

7-2 その他の義務

7-2-1 共同での個人情報処理

複数の個人情報処理者が共同で個人情報の処理の目的や処理方式を決定する場合は、各自の権利及び義務を約定しなければならず、個人情報処理者が共同で個人情報を処理し、個人情報の権益を侵害した場合には連帯責任を負う(本草案第21条)

7-2-2 個人情報の処理の委託

個人情報処理者が個人情報の処理を委託する場合、受託者と委託にかかる処理の目的、処理方式、個人情報の種類、保護措置、双方の権利及び義務等について合意したうえ、
受託者の個人情報処理活動を監督しなければならない(本草案第22条第1項)

 7-2-3 セキュリティリスク防止措置

個人情報の処理者は、個人情報の処理の目的、処理方式、個人情報の種類及び個人に対する影響、存在しうるセキュリティリスク等に基づき、以下のような措置を講じることで、個人情報処理活動が法律、行政法規の規定に適合することを保証し、権限を付与されていないアクセス及び個人情報の漏えい又はそれが窃取、改ざん、削除されることを防止する(本草案第50条)

  • 内部管理制度やオペレーション規程の制定
  • 個人情報に対するレベル別分類管理の実行
  • 相応の暗号化、非識別化等のセキュリティ技術措置の採用
  • 個人情報の処理の操作権限を合理的に確定し、定期的に従業員に対し安全に関する教育及び研修を行う
  • 個人情報安全事件の緊急時マニュアルを制定し、実施させる
  • 法律、行政法規に定めるその他の措置
7-2-4 個人情報保護責任者の指定

個人情報の処理が国家インターネット情報機関の規定数量に達した個人情報処理者は、個人情報保護責任者を指定し、個人情報処理活動及び保護措置等の監督をさせなければならず、個人情報処理者は、個人情報保護責任者の氏名、連絡先情報等を公開したうえ、個人情報保護の職責を履行する機関に提出しなければならない(本草案第51条)

7-2-5 個人情報の処理活動に対する監査

個人情報処理者は、定期的にその個人情報処理活動、保護措置等について法令に適合するか否かの監査を行わなければならない(本草案第53条)

7-2-6 事前のリスク評価

個人情報処理者は、以下に掲げる個人情報処理活動を行う前に、リスク評価を行い、処理状況を記録しなければならず、これらは最低3年間保管しなければならない(本草案第54条第1項、第3項)

  • センシティブ個人情報の処理
  • 個人情報を利用した自動意思決定
  • 個人情報処理の委託、第三者への個人情報提供、個人情報の公開
  • 中国国外への個人情報提供
  • その他個人に対し重大な影響のある個人情報処理活動

また、上記のリスク評価には以下の内容が含まれなければならない(本草案第54条第2項)

  • 個人情報の処理の目的、処理方式等が適法、正当、必要か否か
  • 個人への影響及びリスクの程度
  • 最小したセキュリティ保護措置が適法、有効であるかどうか、リスクの程度に相応か否か
7-2-7 個人情報漏洩事故に対する対応

個人情報処理者が個人情報の漏えいを発見した場合、ただちに救済措置を取るとともに、原則として個人情報保護の職責を履行する機関及び個人に対して以下の内容を含む通知をしなければならない(本草案第55条第1項)

  • 個人情報が漏えいした原因
  • 漏えいした個人情報の種類及びこれにより生じる可能性のある危険
  • 既に講じた救済措置
  • 個人が講じることのできる危険の軽減措置
  • 個人情報処理者の連絡先情報

中国個人情報保護法(草案)に関する報道

先日、全人代常務委員会において個人情報保護法の草案について審議が開始されたという報道が出されました。

japanese.cri.cn

中国においては、個人情報の保護に関する体系的な法律は制定されておらず、数多くの法律、国家基準や行政法規によって個別的、非体系的に個人情報保護に関するルールが定められてきました。そのため、個人情報保護法の制定は、これまでも度々全人代の立法計画に掲げられてきたものの、立法に至らないということが繰り返されてきたという経緯があります。

しかし、2017年に施行された民法総則やサイバーセキュリティ法といった法律の中で、個人情報の保護に関する規定が定められた頃から、個人情報保護法の制定に向けた期待と動きが徐々に強まっていったように思われます。

その後、2019年の年末には全人代常務委員会が2020年にはデータセキュリティ法と並んで個人情報保護法を成立させる予定であることを表明しており、2020年5月に公布された民法典でも個人情報保護に関する比較的詳細な規定が定められたこと、7月にはデータセキュリティ法の草案がパブリックコメントの募集を開始したこともあり、個人情報保護法の制定が益々現実的な話となってきていたところ、10月13日に全人代常務委員会が個人情報保護法草案(以下「本草」といいます。)の審議を開始したという報道が出されました。

(データセキュリティ法草案については以下をご参照) 

chinalaw.hatenablog.com

今の時点では、まだ本草案の具体的な条文については公表されていませんが、全8章、70の条文によって構成されているようです。恐らく、内容としてはこれまで既に制定、施行されてきた国家基準、ガイドライン(特に2020年10月1日より施行されている改正個人情報安全規範(个人信息安全规范))を、民法典やサイバーセキュリティ法との整合性を持たせる形で整理したものになると想像されますが、今回は、全人代のウェブサイトに掲載されている本草案に関する概要を、最新情報としてご紹介していきたいと思います(原文はこちら)。

1 個人情報保護法の適用範囲

1-1 個人情報等の定義

全人代のウェブサイトの記載によれば、「個人情報」とは、電子又はその他の方式によって記録される、認識され又は認識が可能な、自然人の各種関連情報と定義されているようです。

もっとも、民法ではより詳細に、電子又はその他の方式によって記録され、単独で又はその他の情報と結合して特定の自然人を識別できる情報(自然人の姓名、生年月日、身分証番号、生物識別情報、住所、電話番号、メールアドレス、健康情報、行動情報等を含む。)と定義されておりますので(民法典第1034条第2項)、実際には民法典と同じような定義になるのではないかと思われます。

また、本草案において、「個人情報の処理」には、個人情報の収集、保存、使用、加工、移転、提供、公開等の活動を含むと定義されているようですが、これは民法典と一致しています(民法典第1035条第2項)。

1-2 域外適用

本草案によれば、個人情報保護法は、中国国内の個人権益を十分に保護するために域外適用がなされることが規定されているとのことです。すなわち、中国国内の自然人に対して商品又はサービスを提供することを目的として、又は中国国内の自然人の行為等の分析評価をするために、中国国外で発生する個人情報処理については、中国個人情報保護法が適用され、尚且つ、中国国外の個人情報処理者に対し、中国国内において専門機関又は指定代表を設置し、個人情報保護関連事務に責任を負わせなければならない旨が定められているようです。

2 個人情報処理に関するルール

2-1 適法、正当な方法による処理

本草案においては、個人情報の処理は、適法、正当な方法によらなければならず、明確で合理的な目的を有すること、目的の実現に最小限度にとどめること、処理規則を公開すること、情報の正確性を保証すること、安全保護措置を講じること、といった原則を、個人情報処理のすべての過程において遵守することが定められているようです。この辺りは、民法典でも一定の定めを置いていますが(民法典第1035条第1項)、これと関連、又は補充する内容の規定になるかもしれません。

中でも、新型コロナウイルスの流行の中において、ビッグデータコロナウイルスの抑え込み、事業の復興等に大きく貢献したことに鑑み、突発的な公共衛生事件又は緊急状況下において自然人の生命健康を保護するための対応は、個人情報処理の適法事由の一つとして定めているという点が一つ特徴になっている、とも言われています。要するに上記のような緊急事態下においては、上記の個人情報処理に関する適用の例外が認められる、ということかと理解されます。他方で、似たような規定は個人情報安全規範においても定められています(個人情報安全規範5.6)。

2-2 告知と同意

また、「告知」と「同意を個人情報処理における中心的な原則として据え、個人情報の処理をするにあたっては、事前に十分な告知をしたうえで個人の同意を得ること、尚且つ個人は同意を撤回することができることを要求しているとのことです。

そのほか、重要事項に変更が発生した場合に改めて個人から同意を取得すること、個人が個人情報の処理に対する同意をしないことを理由として商品、サービスの提供を拒絶してはならないことを定めているようです。

中でも、センシティブ個人情報(敏感个人信息)に対してはより厳格な制限を置き、特定の目的と必要性がある場合に限り、センシティブ個人情報を処理することができ、尚且つ、個人からは単独での同意又は書面での同意を得なければならないということです。ちなみに、「センシティブ個人情報」は、一旦漏洩、違法提供又は乱用されると人身、財産の安全が害され、容易に個人の名誉、心身健康上の損害、又は差別的待遇等が引き起こされる個人情報をいうとされています(個人情報安全規範3.2)。

2-3 国家機関による個人情報処理

なお、本草案においては、国家機関が個人情報処理に関するルールを定め、国家機関が職責を履行していることを保障することと同時に、国家機関が個人情報処理をするにあたっては法律、行政法規の定める権限、プロセスを経ることを要求しているということです。

国家が個人情報を大いに活用する中国において、国家機関が遵守すべき個人情報処理に係るルールがどのようなものになるのか、注目に値する部分かと思われます。

3 個人情報の越境提供

本草案においては、重要情報インフラ運営者及び個人情報の処理数量が国家ネットワーク情報部門の規定する数量に到達する者が、中国国外に個人情報を提供する確かな必要がある場合、国家ネットワーク情報部門による安全評価を受けなければならず、また、越境提供される当該個人情報に対して専門機関による認証等を経なければならないことが定められているとのことです。

個人情報の越境移転にあたっての安全評価については、個人情報越境移転弁法(个人信息出境办法)の意見募集稿においても規定がありますが、個人情報保護法においては関連内容がより具体化、あるいは補充されるのではないかと思われます。

また、個人情報の越境移転にあたっての告知と同意については、更に厳格な要求をしているほか、国際司法上の協力又は行政の法執行上の協力に基づき、個人情報を中国国外に提供する必要がある場合には、関連主管部門の認可を得る必要があること、といったことも定められているようです。

加えて、中国国民の個人情報権益等を害する活動を行う中国国外の組織、個人、及び個人情報保護の場面において中国に対して不合理な措置をとる国家及び地区に対しては、必要な措置を講じることができる、といった内容も定められているとのことです。類似する規定は、データセキュリティ法の草案でも見られ、中国に敵対的な国家による個人情報侵害行為に対して国家の主権を行使することができるというスタンスを明確にしていると理解されます。

4 権利義務の明確化

民法典において、個人情報に対する知情権、決定権、調査権、更生権、削除権などといった権利が定められていますが(民法典第1037条)、個人情報保護法でも同様の権限が認められており、個人情報処理者に対しては、個人が権利行使をするための申請受理と処理に係る仕組みを構築することを要求しているとのことです。

また、個人情報処理者に対しては、内部管理制度、操作制度の構築、安全技術措置の採用をすることや、個人情報処理活動に対する監督を行う責任者の指定をすることが義務付けられるほか、個人情報活動に対する定期的なコンプライアンス監査、センシティブ個人情報の処理、中国国外への個人情報提供といった高リスク処理活動に対する事前のリスク評価の履行、個人情報の漏洩に関する通知や補償義務等の規定が盛り込まれているようです。

5 ネットワーク情報部門による統括

個人情報保護関連の行政上の統括は、国家ネットワーク情報部門が統括を行い、当該部門と国務院の関連部門がそれぞれその職責の範囲内で個人情報保護と監督管理業務を行うこと、といった行政上の権限分掌について定めが置かれているようです。

6 終わりに

以上、現時点で最も確実な情報源である全人代のウェブサイト上の情報を翻訳しつつ整理してみました。恐らく、法律の草案も近々公開され、意見募集がなされるかと予想されますので、草案が出てきた時には改めてご紹介したいと思います。

 

信頼不能実体リスト規定の公布・施行について

2020年9月19日、中国の商務部は「信頼不能実体リスト規定」(中国語は「不可靠实体清单规定」、以下「本規定」という。)を公布し、即日施行しました。

www.nikkei.com

「信頼不能実体リスト」というのは、本規定によって初めて登場した概念ではなく、商務部は2019年5月31日の時点で、信頼不能実体リスト制度を今後構築していく旨の発表をしており、今回の本規定は当該商務部の方針に基づいたものということができます。

もっとも、本規定が公布された前日、同年9月18日にアメリカのthe Department of Commerce が米国内におけるWe Chat、Tik Tokのダウンロードや更新、We Chatを通じた決済サービス(いわゆるWe Chatペイ)を禁止したという時間的関係から見て、アメリカのこれらの措置に対する対抗措置であるとの見方が有力であり(the Department of Commerceによるリリースはこちら)、中国国内ではそのような趣旨であるとの報道もなされています。

本規定に基づく信頼不能実体リストは、現時点ではまだ公表されていませんが、アメリカが国防権限法(National Defense Authorization Act:NDAA)でHuaweiやZTEといったメーカーとの取引を制限したり、今回We ChatやTik Tokのダウンロード等を制限したりと、個別企業について狙い撃ちで規制をかけていることからすれば、近く、そのような米国の個別企業を掲載したリストが公布されることも想定されます。

本規定は、全14条で構成される行政法規ですが、今回は本規定の内容についてご紹介、ご説明したいと思います。

1 信頼不能実体リスト制度の適用対象

本規定によれば、信頼不能実体リスト制度とは、以下のとおり理解されます(本規定第2条第1項)。

外国実体の、国際貿易及び関連する活動における以下のいずれかの行為に対して相応の措置を講ずること 

上記にいう「外国実体」(外国实体)とは、外国企業その他の組織又は個人を含む、と比較的概括的な定義がされています(本規定第2条第2項)。

そして、外国実体による対象行為については、

  • 中国の国家主権、安全、発展利益に危害を加えること
  • 正常な市場取引の原則に違反し、中国企業、その他の組織又は個人との適正な取引を中断し、又は中国企業、その他の組織もしくは個人に対して差別的措置を講じ、中国企業、その他の組織もしくは個人の合法権益を著しく損害すること 

をいうとされています。

なお、本規定では、中国政府は独立的・自主的な対外政策、相互の主権尊重・内政不干渉と平等な相互主義等の国際関係の基本ルールを維持し、一国主義・保護主義に反対すること、そして、他国貿易体制を維持して開放的な世界経済建設を推進することが謳われています(本規定第3条)。

規定の内容及び昨今の情勢からすれば、アメリカを意識していることは、あまり疑いがありませんが、本規定の公布と同時に発表されている本規定の解説では、本規定は特定の国家、特定の主体に対するものではないと述べられています。

2 調査の実施等

信頼不能実体リスト制度は、中央国家機関の関連部門が加入する工作機構により執行され、当該工作機構の弁公室は国務院商務主管部門に設置されることとされています(本規定第4条)。

上記の工作機構は、その職権又は関連方面の提案、通報に基づいて、関連する外国実体の行為に対して調査をするか否かの判断を行うことができ、調査を行う場合には公告することとされています(本規定第5条)。各方面からの提案や通報も調査開始の端緒となるため、間口は広いといえそうです。

そして、工作機構が外国実体に対して調査を行うにあたっては、関係当事者へのインタビュー(询问)、関連する資料の閲覧又はコピー、及びその他必要な方法によって行うことができ、関連する外国実体も調査期間において陳述、弁解をすることができるとされています(本規定第6条第1項)。

工作機構は、実際の状況に基づいて中止又は終了をすることができ、また、もしも調査の中止を決定した前提事実に重大な変化があった場合には調査を再開できるともされています(本規定第6条第2項)。

このように見てみると、調査の開始、終了については、工作機構の裁量が認められており、少なくとも本規定上はこれらの具体的な要件は特に定められていません。また、調査の方法としては、インタビュー、資料の閲覧・コピーが具体的に定められており、それ以外はキャッチオール的な定めがされているにとどまり、実際にどのような調査方法まで採ることができるのかは明確にはされていないといえます。

3 調査を踏まえた処分等

3-1 信頼不能実体リストへの追加

工作機構は、調査の結果を踏まえ、以下の事由を総合的に考慮したうえで外国実体を信頼不能実体リストに追加するか否かの決定をし、その旨の公告をするものとされています(本規定第7条)。

  • 中国の国家主権、安全、発展利益に対する危害の程度
  • 中国企業、その他の組織又は個人の合法権益に対する損害の程度
  • 国際的に一般的な経済貿易ルールに適合しているか否か
  • その他考慮すべき事由

また、外国実体による行為の事実が明確である場合、工作機構は上記の事由を総合考慮し、直接信頼不能実体リストに追加する決定をすることができるともされており(本規定第8条)、この場合には、調査のプロセスが省略されるものと理解されます。

一応、考慮要素を明確にしているという点では評価できるものの、評価基準は抽象的な内容にとどまるため、工作機関の裁量は必ずしも限定されていないものと思われます。

なお、信頼不能実体リストへの追加に係る公告において、当該外国実体との取引をするにあたってのリスクを提示することができ、且つ、実際の状況に基づいて外国実体の当該行為の是正期限を設けることができるとされています(本規定第9条)。

3-2 信頼不能実体リストへ追加された外国実体に対する措置 

工作機構は、信頼不能実体リストに追加された外国実体に対して、以下のいずれかの措置を講じることができ、公告するものとされています(本規定第10条第1項)。

  1. 中国と関係のある輸出入活動の制限又は禁止
  2. 中国国内への投資の制限又は禁止
  3. その関連人員、交通運輸ツールの入国の制限又は禁止
  4. 関連人員の中国国内における就業許可、滞留又は居留資格の制限又は取り消し
  5. 情状に応じた過料
  6. その他必要な措置

中国との輸出入の禁止のほか、対中投資、関連人員の入国等も広く禁止、制限されるということで、措置としては比較的強力な内容になっているように思われます。

なお、信頼不能実体リストに追加する旨の公告で是正期間が設けられている場合、その是正期間中は上記措置は講じず、是正期間が経過した後も是正されなかった場合に措置を講じるということで、是正期間中は措置の執行が留保される形となっています(本規定第11条)。

反対に、中国企業、その他の組織又は個人が、中国と関係のある輸出入活動の制限又は禁止をされている外国実体と取引を行う確かな必要性がある場合には、工作機構弁公室に対して申請を行い、許可を得る必要があるとされました(本規定第12条)。

3-3 信頼不能実体リストからの抹消

工作機構は実際の状況に応じて、外国実体を信頼不能実体リストから抹消することができるとされています。また、外国実体が、公告された是正期間内において違法行為の是正を行い、違法行為の効果を抹消した場合にも、工作機構は信頼不能実体リストから抹消することができるとされています(本規定第13条第1項)。

これらは工作機関の方が主導して信頼不能実体リストからの抹消をする場合ですが、他方、外国実体の方からも信頼不能実体リストからの抹消を申し立てることができ、この場合も、工作機関が実際の状況に応じて信頼不能実体リストからの抹消をするか否かを決定することとされています(本規定第13条第2項)。基本的には違法行為の是正がされたような場合にこのような申請ができるものと思われますが、実際にどのような要件が満たされた場合に信頼不能実体リストからの抹消申請をできるかは条文上は明確にされておらず、やはり工作機関の広い判断権限が残されているといえそうです。

4 まとめ

以上、信頼不能実体リスト規定の概要を掻い摘んでご説明しました。今後、具体的な信頼不能実体リストが公布、制定されていくものと思われますので、新しい動向があり次第、また随時ご紹介していきたいと思います。

中国民法典の解説その②~契約編典型契約Ⅰ~

前回は、中国民法典の中でも契約編の総論箇所についてざっと解説をしました。

chinalaw.hatenablog.com

今回はこれに続き、契約編の中で典型契約について概観してみたいと思います。

民法典においては、典型契約として以下の類型の19種類の契約について定めが置かれています。

1

売買契約

11

運輸契約

2

電気、水道、ガス、熱供給契約

12

技術契約

3

贈与契約

13

寄託契約

4

金銭消費貸借契約

14

倉庫保管契約

5

保証契約

15

委任契約

6

賃貸借契約

16

物業サービス契約

7

ファイナンス・リース契約

17

取次契約

8

ファクタリング契約

18

仲介契約

9

請負契約

19

パートナー契約

10

建設工事契約

 

 

上記の典型契約のうち、保証契約は元々担保法に、パートナー契約については民法通則において定められていたのが、民法典では契約編の中に組み込まれました。そのほか、ファクタリング契約物業サービス契約は、今回民法典で新たに追加された典型契約となります。

そこで、上記の各典型契約のうち、実務上重要と思われる典型契約について、その改正点やポイントについて何回かに分けて解説したいと思います。今回は売買契約金銭消費貸借契約保証契約です。

1 売買契約

1-1 他人物売買に関する規定の新設

現行の契約法上、売買の目的物については、売主が所有し、又は権利を有するものでなければならないという規定が置かれていますが(契約法第132条第1項)、これに反した売買契約に係る効力については特段定められていませんでした。

この点、民法典では売主が処分権を取得することができなかったことを理由として目的物の所有権を移転することができない場合、買主は契約の解除並びに売主に対して違約責任を追及することができる旨明記されました(民法典第597条第1項)。

1-2 危険負担

運送人を利用した、売買目的物の移転、引き渡しに伴う危険の移転について、契約法上は、引き渡し場所が不明確である場合に、売主が目的物を第一運送人に引き渡した時点で、目的物に係る危険は買主に移転することが規定されている一方、引き渡し場所が明確になっている場合についての規定は定められていませんでした(契約法第145条)。

この点、民法典では、売主が買主の指定する地点に目的物を輸送し且つ運送人に引き渡した後に、目的物の危険が買主に移転することとされています(民法典第607条第1項)。目的物が、指定された目的地に運送されたことも危険移転の要件に含まれているといえます。

1-3 瑕疵担保責任

売買契約の目的物が品質に係る要求に合致しない場合には、買主は売主に対して違約責任を追及することができますが(契約法第155条、民法典第617条)、瑕疵担保責任の減免に関して契約で合意されることもあります。

この点、契約法上、瑕疵担保責任の減免に関して正面から定めた規定は置かれていませんでしたが、民法典では、上記のような責任の減免を内容とした合意をすることは可能であることを前提としたうえで、売主が故意又は重大な過失により目的物の瑕疵について買主に対して告知をしなかった場合、売主は瑕疵担保責任の減免を主張することができない旨が明記されました(民法典第618条)。

1-4 検収に関する規定の追加

1-4-1 検収の期限

売買目的物の検収について、契約法上は、以下のような規定を置いています(契約法第158条第1項、第2項)。

検収の期限に係る約定の有無

目的物の数量、品質の不適合に関する売主への通知

約定がある場合

検査期間内に、目的物の数量又は品質が契約の定めに合致しない状況を売主に対して通知しなければならない。

約定がない場合

目的物の数量又は品質が契約の定めに適合しないことを発見し、又は発見すべき合理的な期間内に、売主に通知しなければならない。

 

上記の契約法の規定に加え、民法典は検収に関して以下の規定を新たに定めました。

検収の期限に係る約定の有無

目的物の数量、品質の不適合に関する売主への通知

約定がある場合で、約定された期限が短すぎる場合(民法典第622条第1項)

目的物の性質と取引習慣に基づき、買主が検査期間内に全面的な検査を行うことが困難な場合、約定された期限は、買主の目的物の外観の瑕疵に対する異議を述べる期間と見なす。

約定がない場合(民法第623条)

買主が既に受領し署名した出荷票、確認票に目的物の数量、型番、規格等が記載されている場合、原則として、買主は数量、外観の瑕疵に対して検査を行ったものと推定する。

1-4-2 検収基準の齟齬

売主が買主の指示に基づき第三者に目的物を引き渡した場合で、売主と買主との間で約定された検査基準と、買主と第三者との間で約定された検査基準が一致しない場合、売主と買主との間で合意された検査基準を基準とすることが新たに定められました(民法典第624条)。

1-5 分割による代金支払い

契約法上、売買代金の分割支払いの合意がされている場合で、未払となっている代金が代金総額の5分の1に達した場合には、売主は買主に対して代金全額の支払い又は契約解除の請求をすることができると定められています(契約法第167条第1項)。この点について、民法典は、売主から買主に対して代金全額の支払い又は契約解除の請求をするための要件として、買主に対する催告と、催告後合理的な期間内において既に期限の到来している支払いがなされていないことも付け加えた(民法典第634条第1項)。

1-6 所有権留保

1-6-1 第三者に対する対抗

契約法上、売買の当事者間において所有権留保の合意をすることができるという旨の規定が置かれているものの(契約法第134条)、当該所有権留保の合意を第三者に対抗することができるかという点につき法律上は明確にされていませんでした。

この点、民法典は目的物に対する売主の所有権留保は、登記をしなければ善意の第三者に対抗することができない旨が明記されました(契約法第641条第2項)。特に不動産については、従前の実務を明文化したものと理解することができます。他方で、動産に係る所有権留保については、特に登記の要求されない動産に係る所有権留保は、相手方が所有権留保の事実を知らない限りは善意取得され、対抗できないという帰結になるものと考えられます。

1-6-2 所有権留保物件による売主への損害

当事者間で所有権留保の合意をした場合で、目的物の所有権が移転する前の時点において、買主に以下のいずれかの事由があり売主に対して損害を与えたときは、売主は目的物を取り返すことができる旨が新たに規定されました(民法典第642条第1項)。

  1. 合意に基づいた代金の支払いがなされず、催告を経た後合理的な期間内に依然として支払いがなされない場合
  2. 合意に基づく特定の条件が完成していない場合
  3. 目的物の販売、質入れ又はその他不当に処分した場合

もっとも、上記に基づいて売主が目的物を取り返した後であっても、買主が、売主との合意又は売主の指定する合理的な買戻し期間内に、売主による取り戻し原因事由を除去した場合には、目的物の買い戻しを請求することが可能とされています(民法典第643条第1項)。もしも、買主が買戻し期間内に目的物の買い戻しをしない場合、売主は合理的な価格により目的物を第三者に販売することができ、販売価格から買主において未払いとなっている代金及び必要な費用を控除した残りの部分を買主に返還し、もし第三者への販売価格が買主への販売価格に満たない場合は、その差額の部分につき買主は引き続き支払い義務を負うことも合わせて規定されました(民法典第643条第2項)。

2 金銭消費貸借契約

2-1 利息に関する制限

民法典においては、明文により高利貸しを禁止し、金銭消費貸借契約における利息は国家の関連規定に違反してはならない旨が明記されました(民法典第680条第1項)。利息に関する国家の関連規定としては現在、「民間における金銭消費貸借事案の法律適用の若干問題に関する規定」(最高人民法院关于审理民间借贷案件适用法律若干问题的规定)が定めを置いています。

上記規定は従前、年間24%を超えない範囲における利息の合意は有効とする一方、年間36%を超える部分の利息については合意自体が無効としていました。また、遅延損害金についても24%を超えない範囲で定めることができるとされていました。

もっとも、年間24%の利息は高すぎるといった指摘もされていたこともあり、最高人民法院は、2020年8月20日に、上記規定を改正、施行しました。

改正後は契約成立時「1年期貸金市場最優遇貸出利率」(中国語は「一年期贷款市场报价利率」)の4倍を超えない範囲において定めることができるとされました(改正後規定第26条第1項)。

上記にいう「1年期貸金市場最優遇貸出利率」とは、中国人民銀行の授権する全国銀行間貸付センターが2019年8月20日から公布している1年期貸金市場最優遇貸出利率(LPR、ローンプライムレート)のことをいうと定義されています(改正後規定第26条第2項)。

2020年7月20日に公布された上記利率は3.85%であり、これを基に計算すると、年15.4%の利率ということになり、従前認められていた利率と比較してもかなり利率は引き下げられたといえます。

また、契約法においては、利息の定めが不明確な場合にも利息を支払わないものと見なすという規定を置いていましたが(契約法第211条)、民法典においては、利息の定めが不明確な場合で、当事者は補充的な合意に至らなかった場合、当該地域又は当事者の取引方法、取引習慣、市場利率等の要素を勘案し、利息を確定するという内容に変更されています(民法典第680条第3項)。

3 保証契約

冒頭でも触れたとおり、保証契約は従前は担保法において規定が置かれていましたが、民法典では典型契約の一類型として整理されました。

3-1 保証契約の定め

保証契約は、通常の保証と連帯保証の二つの種類に分けられ、保証契約がそのいずれとなるかは原則としては保証契約の定めによって定められます。この点、契約においていずれの保証とするか、定めがない場合又は定めが不明確である場合に、どちらの保証と解するかについて、担保法は連帯保証とする旨定めていたのに対し(担保法第19条)、民法典では通常の保証とする旨定められました(民法典第686条第2項)。

通常の保証人の場合、主債務者に対する債務の履行請求がまだなされていない場合には、原則として保証債務の履行を拒絶することが可能であるのに対し(民法典第687条第1項)、連帯保証人には、補充性がないためこのような拒絶権限は与えられていません(民法典第688条第2項)。

3-2 主債務の変更等

3-2-1 主債務の変更

契約法上、主債務に変更があり、保証人の書面による同意がない場合には、保証人は保証責任を負わないものとされていました(契約法第24条)。この規定によれば、主債務の範囲を縮減するような場合であっても、保証人が書面による同意をしなければ保証人はその責任を免れることができることになってしまい、債権者にとっては不利、不合理な規定であったといえます。

民法典ではこの点について以下のように変更されています(民法典第695条第1項)。

  • 主債務を縮減する変更⇒変更後の債務について保証責任を負う
  • 主債務を加重する変更⇒変更前の保証責任を引き続き負う

また、主債務の履行期間の変更については、保証人の書面による同意がない場合には、当初の保証期間においてのみ保証責任を負うこととされています(民法典第695条第2項)。

3-2-2 主債務の譲渡

契約法上、主債務の全部又は一部が譲渡された場合には、原則として元の保証契約に基づく保証の範囲で責任を負うとされていました(契約法第22条)。

これに対し民法典は、保証人に対して通知がなされていない債権譲渡は保証人との関係で効力を生じないとして、保証人に対する通知を債権譲渡の対抗要件としました(民法典第696条第1項)。また、保証人と債権者との間の保証契約において、債権譲渡禁止の特約を付していた場合に、保証人の書面による同意なく債権譲渡がなされた場合には、保証人は保証責任を負わないものとされました(民法典第696条第2項)。

上記の変更は、保証人の覚知しない債権譲渡から保証人の責任を解放したものとして、保証人保護を趣旨としたものと理解できます。

3-2-3 債務引受

契約法上、債権者が保証人の書面による同意を得ずに第三者への債務引受(中国語は「债务转移」、債務の転移という記載をします。)を許可した場合、保証人は保証責任を負わないものとされていました(契約法第23条)。

これに対し民法典は、債務引受の類型に応じて異なる取り扱いを定めました(民法典第697条)。

  • 三者が債務に加入する場合⇒保証責任は影響を受けない
  • 保証人の書面による同意を得ずに債務の全部又は一部が譲渡された場合⇒原則として保証責任を負わない

前者は、日本民法でいえば併存的債務引受に相当する場合といえますが、その場合は保証人の免責を特に認める必要はないといえます。他方、後者は、日本民法でいえばいわゆる免責的債務引受に相当する場合といえますが、保証人が覚知しないところで債務が移転した場合には、保証人をその責任から解放するべきという趣旨であると理解できます。

3-2-4 保証人の免責

民法典では、通常の保証人について、主債務の履行期間が満了した後に、債権者に対して債務者の執行可能な財産の状況を提供した場合で、債権者が権利行使を放棄又は怠ったことによって当該財産への執行が不能となった場合、保証人は提供した執行可能財産の価値の範囲において保証責任を免れるという規定が新たに追加されました(民法典第698条)。

これは、日本民法でいえば検索の抗弁に類似するものといえますが、日本と同様、これはあくまで通常の保証人についてのみ認められ、連帯保証人には認められていません。

日本から中国への渡航、そして隔離(大連編)

筆者は、今年の1月の春節前に日本に帰国しておりましたが、その後中国での新型コロナウイルスの爆発的な流行もあり、暫くは中国への帰国を見送っておりました。

しかし、その後中国での流行状況が落ち着き始めるや日本での流行が増加傾向となり、3月には当時有効に保有していた居留許可の効力が停止され、日中間の航空便も大幅に制限されるなどし、中国に帰国することが非常に困難となりました。そして、日本の緊急事態宣言が出されたことを受け、在日中国大使館及び中国ビザセンターも休館となったことで、ビザの発行が停止し、事実上中国に戻ることが不可能となりました。

その後、6月頃に中国ビザセンターが部分的に業務を再開したことを受け、中国国内での招聘状を取得の上、改めてビザの申請を行い、今般9月8日に中国に帰国しました。

現在大連のホテルにて集中隔離中となっておりますが、今回は、帰国当日から今日までの記録を残したいと思います。

これから日本から中国へいらっしゃる方の参考になればと思います。

1 品川⇒成田

これまでであれば当たり前のように羽田から上海に飛ぶ飛行機で行き来をしていましたが、現在、依然として日中間の航空便は大幅な便数制限がなされており、現在、関東の方から中国へ飛ぶ飛行機はいずれも成田発のもののみとなっており、羽田から中国へ飛ぶことはできません。

これまでも成田から中国に帰ることは時折ありましたが、その時には大体1000円での高速バスに乗って成田空港まで行っていました。しかし、現在その1000円バスも軒並み運航を中止しておりバス移動はできません。そのため、今回の空港までの移動は成田エクスプレスに乗らざるを得ませんでした。

9月8日6時47分

品川駅で日本に置いていく家族と泣く泣く別れ、一人成田エクスプレスに乗車。

しかし、見事なまでにガラガラで、私の乗っていた車両には他の乗客は1名ほどしか乗っていませんでした。

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ガラガラの成田エクスプレス

9月8日7時53分

時刻通りに成田空港に到着し、JALのチェックインカウンターに向かうと、同じJAL829便で大連に向かうと思わしき人が20人ほど列を作っていました。

列に並ぼうとすると、JALの職員からスマホに中国税関アプリをダウンロードし、健康情報の記入を求められます。ガラケー派の人ですとこの時点で中国には行けませんね。問答無用でスマホがあることが前提の話となっています。

アプリをインストール、起動し、色々な情報を入力していくわけですが、その内容としては以下のような感じです。

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きちんと座席まで入力する必要があります。

これらの情報を入力し終えて、報告を提出すると以下のようなQRコードが発行されます。

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日本を発っていない間も、チェックイン及び飛行機の搭乗にあたって、当該QRコード画面を提示することが求められるため、この画面はスクリーンショットをしておくことが推奨されます。

チェックインを済ませてあたりを見回してみると、旅客はほとんどいない閑散とした状況でした。

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※なお、私が帰国する際は不要でしたが、9月9日に在日中国大使館が出した通知によると、9月25日以降に日本から中国に直行する飛行機に搭乗する場合にも、予めPCRの陰性結果証明を提示しなければならないことになっていますので、9月25日以降に中国へ渡航される方はご注意ください(詳しくはこちら)。

2 成田⇒大連周水子空港

9月8日9時15分
9時15分搭乗開始ということなので搭乗ゲートへ向かうと、想像を超える人だかり。大多数が中国人の方でしたが、多くの人がマスクに加え、フェイスマスク、手袋も装備していましたし、少なくない人が防護服まで装着していました。

この辺は、さすが中国人と感心してしまいました。

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9月8日10時10分~(以下、中国時間)11時30分
飛行機はほぼ定刻通りに出発し、ほぼ定刻通りに着陸しました。さすがJAL

機内はそれなりの人が乗っていましたが、満席とまではいかず、空席もそれなりにポツポツと見られました(自分の隣の席も幸い空席でした)。

機内食は簡素で、中国の国内線に乗ってると出てきそうな感じのものが提供されました。

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フライト中は映画「JOKER」を見ていましたが、朝も早かったので途中で寝てしまいました。。そうこうしているうちに着陸。大連は、中国に赴任してから1度出張で来て以来で、かなり久々。

着陸後、機内に防護服を着た税関職員が搭乗してきて、一部の座席に座っている人を呼び出して飛行機から下ろしていました。その理由はちょっとよく分かっていませんが、その人達が下ろされた後、全乗客が飛行機から降りることになりました。

機体が着陸してから飛行機を降りるまでは約20分程度で、もっと待たされるのかと思っていたので意外と早く降りれたという印象。

3 大連周水子空港⇒大連昱聖苑国際酒店

9月8日11時47分~12時50分(飛行機降りてからPCR検査完了まで)

飛行機を降りると、健康申告エリアに並ばされます。

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この行列の先に設置されているブースにて、健康状態等を尋ねられます。もっとも、結構ザルで、過去2週間どこにいたか、病院に行ったか、発熱はないか、近しい人でコロナかかった人いるか、などなどの質問を聞かれる程度です。

なお、日本人が搭乗している便ということもあり、職員の中には日本語を喋っている人も複数いたように思います。

ブースでの問診が終わると、次はPCR検査を受けることになります。PCR検査は、鼻に細い綿棒のようなものを突っ込まれ、口内の唾液を採取され、ものの5分程度で終了します。その際に、着用していたマスクを破棄し、N95を着用するように指示されます。そのため、私は前日に買ったばかりのエアリズムマスクの1枚が早々に犠牲となってしまいました…

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そのため、中国に来る際は、(十分なストックがある方を除き)繰り返し利用可能な布マスクではなく、使い捨てマスクを着用することをお勧めします。

なお、PCR検査の結果がいつ頃どのように通知されるかなどといったことは、特に聞かなければ教えられません。私も特にそのようなことは確認していませんでしたが、到着当日の夜にホテルの責任者から教えてもらいました。

9月8日12時50分~13時17分(入国審査からホテル振り分けまで)

PCR検査が終了すると入国審査です。

中国に入国するにあたっては、普通黄色い入国カードに必要情報を記入するのですが、今回はそれに加えて、

  • 隔離期間後、遼寧省を出る予定の有無
  • 北京に行く予定の有無
  • 最終目的地
  • 隔離後の旅程
  • 国内にいる連絡者

などといった事項についても記載することが求められました。税関アプリでも、国内の連絡者の記載が求められましたが、正直言って国内にそのような人は特にいませんので、この辺は適当に書いて済ませました。

入国審査を終えると、消毒のされたスーツケースがずらりと並べられており、そこから自分のものをピックアップし出口へ向かいます。

もっとも、すぐに外に出られるわけではなく、外国人については、別途特設ブースにてパスポートの提示のほか、中国国内の目的地情報等を改めて記入させられることになります。この時にいた外国人はほとんど日本人でしたので、税関の職員も日本語が結構上手でした。

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この手続きが終わった人から順に集中隔離用ホテルに移動させられることになります。

ホテルへの移動は、少人数でのマイクロバスでの移動になります、自分が乗ったマイクロバスには全部で6人の日本人(自分含む)と運転手のみでした。マイクロバスに、スーツケースを持ち込まなければならないというのが面倒ではありましたが、少人数だけに空間に余裕はあり、ソーシャルディスタンスは保たれていました。

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4 大連昱聖苑国際酒店

9月8日14時10分

マイクロバスで約20分強移動し、大連昱聖苑国際酒店に到着。バスから降りた時は午後の暑い時間帯のはずでしたが、涼しい秋風が吹いていて、涼しく感じました。

大連での外国人向けの集中隔離用ホテル現在2件で、自分の宿泊している大連昱聖苑国際酒店大連聖汐湾酒店だそうです。後者は見たところリゾートホテルっぽい感じですね。ちなみに、私と同日で同じホテルに宿泊した外国人は26名とのことでした。

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ロビーには政府指定の隔離用ホテルである旨の張り紙

※以下の内容は、いずれも大連昱聖苑国際酒店に関する情報となりますのでご注意ください。

費用

ホテルに到着するとチェックインすることになり、そこで14日分の宿泊費と隔離期間中の2回の検査(抗体検査とPCR検査)の費用を一括前払いすることになります。自分の宿泊している大連昱聖苑国際酒店は、一応、スイートルームとシングルルームorツインルームが選択できるらしいのですが、生憎当日はツインルームしか空きがないとのこと。

宿泊費は、3食の食費込みで550元/日(約8500円)で(なお、スイートルームは700元/日)、検査費は抗体検査94元PCR検査95元で、合計7,889元を一括前払いしたことになります。

支払いはアリペイ、We Chatペイはもちろん、クレジットカードも使えますので、人民元が足りない方はクレジットカードでの支払いでも大丈夫そうです。

なお、これらの費用を会社精算するにあたっては、領収書(中国語で「発票」)を入手する必要がありますが、宿泊費については、増値税控除のできない普通発票のみ検査費については個人宛の発票しか発行できないということになっているようですので、会社での費用精算をする場合には、事前に経理の方に一言言っておいた方がよいかと思います。

部屋

部屋は、一人で住むには広すぎるくらいの部屋でした。めちゃめちゃ綺麗というわけではありませんが、十分に清潔な部屋でした(但し、14日間一切清掃が入りませんので、その点は考え物です)。

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窓から臨む景色

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WiFiも基本的には問題なく、部屋にこもって仕事をする、家族とWe Chatで通話するなどという面では特に困りませんでした。もっとも、やはり中国、VPNを経由しないとYou TubeAmazon Primeなど見れませんし、VPNを経由しても極端に通信速度が遅くて映画や動画を見るにはイライラします。日本での生活に慣れると、この中国のグレートファイアーウォールは本当に鬱陶しく感じますが、仕方ないですね。

食事

食事は基本的にホテルから配給されるもののみで、大衆点評等の出前アプリを使って出前を頼むことはできません(ただ、We Chatを通じてホテルの責任者に飲み物や食べ物、お酒等を買ってきてもらうことは可能)。

食事は、朝、昼、晩の三食が出て、朝が7時、昼が11時、夜が17時にそれぞれ配給されます。配給されるのはお弁当で、時間になると、部屋の外に置かれた椅子の上にお弁当が置かれています。

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食事は、3食どれもこれもがっつり中華です。

隔離二日目に出た食事はこんな感じ。

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朝食

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昼食

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夕食

続く三日目はこんな感じ。

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朝食

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昼食

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夕食

1日目、2日目くらいまではよかったのですが、3日も過ぎるとさすがに飽きてくる上に、どれもこれも油っぽいので胃がどんどん重くなってきます。なおかつ、基本的に部屋の中にいても一日中座って仕事してるか動画見てるかで、ほとんど動きませんので、3食きっちり食べてると多分、あっという間に太ります。

そのため、中華ウェルカムという方であっても、日本からいらっしゃる際には、何等かインスタント類の食糧を持参して、たまにインスタント類を挟むことをお勧めします。また、お菓子類も基本的に出てきませんし、ホテル経由でしか入手ができませんので、甘いものが嫌いという方以外は、一定程度の量のお菓子を一緒に持ってくることをお勧めします。

また、飲み物については、ホテル到着の翌日にペットボトルの水をどさっと渡される以外は、お弁当にたまについてくるジュース程度しかありません。ただただ水を飲んでるのも飽きるので、麦茶パックやポカリ(粉)等を持ってくるとか、お酒が好きな方はお酒も多少持ってくると良いかもしれません。

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14日分の水

日用品等

到着翌日に、隔離期間中のトイレットペーパーやスリッパ、アメニティがどっさり配給されます。

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が、それ以外には特にありません。

ランドリーサービスもありませんので、隔離期間中の洗濯物は自分でする必要があります。そのため、個包装の洗剤を一定数持参すると良いかと思います。自分は個包装のアタック0を持ってきました。 

また、ずっとホテルのアメニティのシャンプー類を使うのも嫌でしたので、シャンプーやボディソープも持ってこようと思っていましたが、個別に持ってくると重くなるので薬局で見つけたこんなものを持ってきました。最近は色々便利になったものです。 

その他

一応、毎日9時と15時に体温を測って、We Chatでホテルの責任者に報告しなければならないことになっているのですが、そもそも体温計を持っていません。そのため、体温計をよこすようにホテルの責任者に連絡したのですが、全然届きませんでした。

その間、体温測っていないわけですが大丈夫なんですかとWe Chatで聞くと、

「大丈夫、自分的に正常でしょ?」

という、急に雑な感じに。

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こういうなんか雑なところが中国っぽくて好きです。

そして、一応届けられた体温計らしきものがこちら↓

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体温計?

体温計の先端をつまんでも何をしても何の変化も見られず、結果使い方が分からないということで体温を測ることは諦めました…(その後も特に何も言われてませんし)

そんな感じで、厳格さと雑さの入り乱れる中国感を、久々に身をもって体験している状況です。

5 まとめ

そんなこんなで、9月8日から始まった隔離生活は、9月22日の午前9時半まで続くことになります。

まだ折り返しにも到達しておりませんが、今のところ平日は普通に仕事に忙殺されていたり、隙間時間は家族とビデオ通話したり映画を見たりしながら、正気を保ちながらやっております。

今回は、めったに体験できない体験ということで済ませることができそうですが、今後もずっとこの隔離政策が続くとなると、物理的にも気持ち的にも自由な日中間の渡航ができなくなってしまうので、本当に困りますね。一日も早く正常な渡航ができるようになってほしいと思うところです。

(9月26日更新)

中国外交部及び国家移民管理局は、9月23日に、9月28日0時から、中国の商務(工作)、私人事務及び家族訪問の有効な居留許可を有する外国人の入境を許可し、新たな査証申請を不要とすること、居留許可の有効期限が過ぎている場合は、当該居留許可と関連資料により査証を申請できる旨の公告を発表しました(原文はこちら)。

したがって、3月に効力を停止された外国人の居留許可が、その効力を回復したものといえます。他方、効力を停止され、その後期限が過ぎて失効してしまった居留許可についてもビザセンターに資料提出をすればビザを取得できる旨が言及されていますが、具体的な内容については今のところまだ明確にはされていません。

また、中国への渡航に際し、集中隔離を受けなければならないという政策や、中国行きの飛行機に搭乗するにあたってPCR検査陰性証明を取得しなければならないといった政策は引き続き維持されていますので、この点は注意が必要です。