中国法ブログ

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中国の法令の名称

はじめに

○○法、○○法実施条例、○○管理規定、○○弁法…などなど、日本の法令の名称に慣れていると、中国の法令の名称はちょっと変わってるなぁと思う方は多いかと思います。

今回の記事では、今後中国の法令に触れることがあった際の参考になればと、法令の名称に関するルールをご紹介したいと思います。

法源ごとのルール

※中国の法源については、以前のエントリーで紹介していますのでこちらをご参照ください。 

chinalaw.hatenablog.com

 

法律の名称

法律の名称については、非常にシンプルで、

○○

というのが原則です。これは日本も同じですね。

民法総則(民法总则)、刑法(刑法)、会社法公司法)、労働法(劳动法)

現行の法律のほとんどは「○○法」という名前ですが、一部、「○○条例」又は「○○条例」という名称も存在しています。

学位条例(中华人民共国学位条例)、人民警察階級条例(中华人民共和国人民警察警衔条例)、消防救援階級条例(中华人民共和国消防救援衔条例)

なぜ法律にもかかわらず「条例」という呼称が使われているのかは定かではありませんが、いずれにしても、「条例」の呼称が使われている法律は超少数です。

行政法

名称

行政法規については、一般的に「条例」(条例)、「規定」(规定)、「弁法」(办法)を付けるものとされています。
また、国務院が全人代及び全人代常務委員会の授権によって制定する行政法規については、「暫定条例」(暂行条例)又は「暫定規定」(暂行规定)を付けるものとされています(行政法規制定プロセス条例(行政法规制定程序条例)第5条第1項)。

他方、国務院の各部門、地方人民政府が制定する規定(规章)については、「条例」を付けてはならないとされています(行政法規制定プロセス条例第5条第2項)。そのため、「条例」と付いているのは、基本的に法律又は行政法規であると考えて差し支えないでしょう。

なお、「暫定条例」、「暫定規定」には「暫定」と付けられていますが、これは、完全、全面的なルールや規定を定めるには、時間がかかることに鑑み、今後更に改善、改定されることを前提とした暫定的なルール、規定であることを意味していると理解されています。

各名称による区別

行政法規には、上記のとおり条例、規定、弁法という異なる名称があることが分かりましたが、これらはどのように区別されるのでしょうか。この点については、概ね以下のとおり理解されています。

種類 意義
条例 特定の分野の行政業務において制定される、比較的全面的で、体系的行政法 著作権法実施条例(中华人民共和国著作权法实施条例)
規定 特定の分野の行政業務において制定される部分的行政法 国際著作権条約実施に関する規定(实施国际著作权条约的规定)
弁法 特定の項目の行政業務において制定される、比較的具体的行政法 著作権質権登記弁法(著作权质权登记办法)

 

規定

名称

規定(规章)については、一般的に「規定」(规定)、「弁法」(办法)を付けるものとし、「条例」(条例)を付けてはならないとされています(規定制定プロセス条例(规章制定程序条例)第7条)。実際には、規定、弁法のほか、「細則」(细则)が使われるものもありますが、規定、弁法の方が数としては多いように思います。

「条例」を使用してはならないという点を除き、規定、弁法は、行政法規と共有ですので、「規定」、「弁法」の付いた法令が行政法規なのか、規定なのかは、制定主体を確認するしかありません。

各名称による区別

規定、弁法の区別は、基本的に行政法規とパラレルに考えて差し支えないと思われます。

地方性法規

なお、地方性法規の名称については、これという法令上のルールが見当たりませんが、例えば上海市に適用される地方性法規の中には、やはり条例、規定、弁法の付いたものが数多く制定されています。

まとめ

以上、中国における法令の名称に関するルールについて、簡単に紹介してきました。

色々な呼称がありますので、あまり慣れない方にとっては混乱してしまうこともあるかもしれませんが、今後、中国の法令に触れた際に頭を整理する参考になれば幸いです。